第9話 「精神の爆発」 前編


「あ、あれはタイウ君!?」
アウト・サイダーのモニターに映った映像を見てミシェーが叫ぶ
「お知り合いなんですか?」
ルミナが振り替えって聞く
「ええ、ワイズ君達の友達...私の生徒達よ」
信じられないと言う目でモニターを見続けている
「達...?」
「さっきワイズ君が通信した相手も友達の一人よ」
「ワイズさんの...?でも確かワイズさんの友達は...」
ルミナの声が沈む
「ええ...みんな行方不明になっていたんだけれども...」
ミシェーの目は嬉しさと悲しみが混じっている
「でもタイウ君は...」


「タイウ...なんだろ?返事しろよ!」
ゼロが通信を試みる。しかし
「残念ながら君達の友達だったタイウ君は、もう喋れないよ」
どこか別の所からの通信がまた入る
「貴様!カオスだな!」
ゼロが怒りの声で通信の主に叫ぶ
「(カオス?)」
ワイズはどこかで聞いたなと疑問の顔をする
「そのとうりだゼロス・インフィニティ君。いや、弱虫ゼロ君がいいかな?」
「ふざけんな!訳の解らないの実験台に誰がなるかって言うんだ!」
「その代償がこれだよ?」
「代償?」
ワイズが会話に入り込む
「その声はスィズ...」
何かを言いかけて言葉を飲み込む
「ワイズ・スカイフレン君ですか...君も見たでしょう?タイウ君のなれの果てを」


その映像はおそらくアファームドコックピット内の映像なのだろう。タイウはそこにいるがとてもパイロットとしては見えなかった。タイウの着せられている服には大小数多くのケーブルやパイプ、さまざまな機材が繋がり埋め込まれている。それは僅かながら顔や頭にも。そう、彼はパーツとしてアファームドに組み込まれていた


「クッ...」
ワイズは改めてタイウを見ていた。涙を流しながら
「俺を実験台にしても、貴様はタイウを結局は!」
「そうしただろうね...私のことだから!」
カオスは自分をよく解っているようだ。この言葉を言い終わる時にはすでに彼は笑っていた
「絶対に...ゆるさん!」
ゼロが吠える
「残念ながら今からタイウのターゲットは、変更になる」
カオスがそう言うとアファームドがアウト・サイダーに突進する
「何!?」
とっさのことにワイズは反応できず、手痛い一撃の蹴りをまともに喰らう
「うわあああ!」
アウト・サイダーは背中から防壁にぶつかる
「く...あ...」
後頭部を強打して気絶するワイズ
「オヤオヤ...一撃で気絶とは」カオスが残念そうに言う
「貴ッ様あああ!」
一瞬ではあったが、何もできなかったもどかしさと友をまた傷つけられた怒りでゼロがまた吠える
「安心したまえ、ワイズ君が気がつくまで君の相手をしてあげまから(そうすればG・Bも発動しやすいでしょうから...)」
不気味に笑うカオス
「タイウ、目標をアウト・サイダーからスペトライルへ変更」
「リョウカイ」
タイウの口は動くが、声はまるで機会音のようだった
「棺桶には少々高価ですが、まぁたむけとしてスペトライルと共に死になさい」
「なめるな!まだ死ぬつもりは無い!!」
スペトライルをアファームドに向けて構え直す
「(手加減ができる相手では無いのは先刻承知...すまないタイウ!)」
ゼロの目が冷酷に変わる。殺気をともなった物に
ゼロはスペトライルの右腕武器<零・ホワイト>を横に振り、ソニックウェーブを放ちつつ、それとともに前に進む
アファームドもビーム・ソードからソニックウェーブ放ち、相殺。二機は正面から体当たりする
「力ならこちらがッ!」
力任せにアファームドの状態を崩し、両腕のソードで斬り付けようとしたが、
「!!またか!」
真後ろに回り込まれる
「くッ!」
ジャンプでアファームドの斬撃をぎりぎりで回避しきる
「(回り込みにしたって早過ぎる...あんな加速、パイロットの負担に...)」
着地するとアファームドがビーム・ライフルを乱射してくる
「(だからか...だからタイウを改造したのか!)」

人が機体に乗る限り、越えられない限界がある。速度、加速、反動、衝撃、呪い、越えられないさまざまな限界の壁。マインチャイルドという器に替わる器、それに対してのカオス博士の出した答えが「人間」の「改造」だった

「そんなの許せるかよッ!」
ライフルを回避しつつ叫ぶ
「ワイヤー!」
アサシン・ラインをアファームドに向けて射出
アファームドは回避したように見えたが
「コントロール可能なんだよッ!」
アファームドの左手にあるビーム・ライフルの刃に絡みつき、スペトライルがクンッとラインを引くと刃の部分がバラバラになる
「よしッ!」
思わず笑うゼロ
ファームドが左手に残ったビーム・ライフルの残骸を捨てると、ビーム・トンファーを出して再度突撃してくる。
「(早い!通常武装もあんのかよ!)」
少し焦りながらあるスイッチを入れる。
「!?」
アファームドの動きが止まる。スペトライルが目の前から消えたのだ


「ステルス機能に気付いていたか...流石ゼロス君」
アファームドから送られてくる映像を見ながらカオスが感心する
「でもそれだけでは倒せないかと」
小さく笑うカオス


「逃げの手には使わない!」
ステルスを利用してリーチで勝っている左側から接近攻撃を仕掛ける
ガキッ!
左手のビーム・トンファーで攻撃を止められる
「何!?ステルス使ってるのにか!?」
アファームドの頭はしっかりとスペトライルを捉らえといる
右手のビーム・ソードでさらに斬り付ける
「くっ!」
寸前で機体を引き回避、そして後退するゼロ
「何でバレたんだ?音声は外には出してないぞ」
思わず声を出すゼロ
見るとアファームドは頭を右左と動かしてスペトライルを探しているようだ
「(熱反応か何かか?.....わからん...だがこちらを探し終わるのにタイムラグがあるようだな...)」
思考を巡らせている間にアファームドが目の前に来ていて、武器を合わせて×字斬りをしようとしていた
「早過ぎるっての!」
ステルスを切り、<零・ホワイト>で突くように×の真ん中に当てる


ステルス装置と<零・ホワイト>の同時使用はエネルギーの関係で同時には使えない


出力に負けて後ろに吹っ飛ぶアファームド
「あぶねぇ.....!」
こちらを見ているアファームドに不振感を抱く
「(奴の早さならまた直ぐに喰らいついてきてもいい筈..カメラのモード変換にでも時間がかかるのか?)」
ゆっくりと立ち上がるアファームド
「(撃破方法は見つかった...だが...)」 タイウの存在に迷う。いくら冷酷になろうとも、親友を見捨てられる程ゼロは残酷ではなかった


タイウのアファームドとゼロのスペトライルが戦っているさなか、ワイズは自機の中で気絶していた。無意識に少し昔を夢見ながら...


「まぁたここで寝てやがったなワイズ」
左横から聞き慣れた友の声がする
「そういうタイウはどうなんだよ?」
右目を閉じたまま左目でタイウを見て言う

少し前、ワイズとタイウは授業をサボるとよく学校の屋上にある貯水塔の横で昼寝をしていた

「今日もいい天気だなぁ...ふぁ.....ねみぃなぁ」
タイウがあくび交じりでのんきに言う
「お前単位大丈夫なのか?」
青い空と流れる雲を見ながら話返す
「心配症はいいが、お前こそミシェー先生におしおきされんぞー」
半分寝ながらまたのんきに返す

何時のサボりも大概他愛のない話をしながら時間を過ごしていた。タイウにはそんなのんびりした時間が好きだ、と少し昔にワイズは聞いたことがあった


「...イ...ん...ワイ...さ」
閉じられた意識の中、女性の声がした
「(だ...れ.....?)」
「ワイズ..イズさ..ズさん」
次第に大きくなる女性の声
「(俺を..呼んで...?)」
「ワイズさん!!」 一際大きな声
「!!」
両目を見開いて気がつくワイズ。額から血が流れている
「.....ルミナ...さん?」
モニターの右上に映ったルミナが涙をボロボロ流して何度も呼んでいる
「!気がつきましたか!?」
声まで泣いているルミナ
「ゴメン...気失ってたみたいだ」
顔に右手をあながら謝るワイズ
「それより大丈夫なんですか?!」
「頭を強打したみたいだけど...まだやれるよ」
右手に着いた血を一瞥したあと顔を正面に見直す
「やれるって...タイウさんと戦うんですか!?」
大声で驚くルミナ
「ああ、そうだよ」
アウト・サイダーを起き上がらせ、CBRを持ち直させる
「やめてください!友達と戦うなんて!!」
再び大声で言うルミナの声には、まだ涙が混じっていた
「あいつを...タイウを助けるために戦うんだ」
ワイズ落ち着いている
「いったい、どうやって?」
不意にミシェーの声が入る
「教官...」
「無策で戦える相手でも無いのよ?ましてや助けるなんて...」
ミシェーがさらに続けようした時
「ミシェー教官!そんな言いかた...あんまりです!」
とルミナが抗議する、が
「私は今最高司令官としてここにいるの!部下のむちゃな行動は抑えなければいけないのよ...!」
私も何か手助けをできるならしたいとばかりに言い放つミシェー
「す、すみません...」
ミシェーの心を感じとれたのか、謝るルミナ
「策ならあるよ先生」
また不意に、今度はゼロの声が司令室に流れる
「ゼロ君!?」
「アウト経由で通信を繋いだんです」
とワイズ
「そういうことです」
ニッとモニターに向かって笑うゼロ
「その策って?」
ミシェーが落ち着きはらい聞く
「伝えたいのは山々なんですが、この通信は傍受されているかもしれないんで...」
「任せろ...と?」
ミシェーがまゆをひそめて問う
「そうゆうことです。おわッ!」
通信中もスペトライルはアファームドの猛攻を受けている
「(判断している時も別の策を立てる時も無い...か)」
少しの間下を見て瞬時に考える。そして
「解った、ゼロ君にまかせましょう」
とミシェー
「ありがとう先生!ついでにワイズを借ります」
と言うと通信を切るゼロ
「じゃあ、俺も行きます」
と通信を切るワイズ
「無茶苦茶です!司令官!!」
副司令の教官がミシェーに話かける。かなりあわてているのか手が変な動きをしている
「責任は私がとります!」
それを一括するミシェー
「な!?...し、知りませんよ!」
そういうとすごすごと元いた場所に戻る副司令
「(上の廻し者がこういう時にだけ!.....ワイズ君、ゼロ君頼んだわよ!)」


「で、策ってなんだよゼロ?」
戦いに混ざり、コックピット当てないようCBRで牽制しながら通信するワイズ
「さっき言ったように傍受される可能があるからッ!」
トンファーをぎりぎり絶・グレイで受け止める
「カオス博士か...」
ワイズの右目が少し金色に揺らめく
「(博士...?俺は博士なんつったか?...まいいか)」
少し疑問に思うが
「とにかく手短に説明するぞ」
「ああ」
「俺の後(うしろ)に付け、以上!」
「.....そんだけ?」
「おう、そんだけさッ!」
アサシン・ラインを放ち距離をとる


「何をする気か...じっくり見せてもらいましょうか」
案のじょう通信を傍受していたカオスがまた笑う
「所詮タイウ機は私の手の内の一つに過ぎないからね」


「そろそろ...行くぜワイズ!」
スペトライルがアファームドに向かってダッシュを仕掛ける。それと同時にキーボードで何かの設定を素早く変える
「う、ういさあ!」
スペトライルの真後ろにアウト・サイダーが続く
それに合わせてか、アファームドも突っ込んでくる
「(かかった!)」
ゼロはそれを見るとステルスのスイッチをオンにする。霧がかかるようにスペトライルが消え、アウト・サイダーが見える筈。だったが


「!?...なるほどステルスの設定を変えましたね」


スペトライルはおろかアウト・サイダーの姿まで消えていた


「(だが、スペトライルのステルスでは二機同時に隠すことは出来ない...せいぜいアウト・サイダーはスペトライルの後に隠れるだけだな)」
一瞬で分析したカオスは
「タイウ!周りこんでアウト・サイダーを叩け!」
と指示を出す


だがアファームドは停止していた。カメラのモード変換である


「(しまった!対ステルス発見装置が先に起動してしまったか!)」


「よし!ワイズたのんだぜ!!」
そう言うと真横にスライド移動するスペトライル。今度はステルスを使用しないアウト・サイダーを前に出してさらにカメラモード変換タイムラグを作る気のゼロだったが


「対ステルスを解除急げ!」
とカオスの指示が飛ぶ


その指示をうけてアファームドのカメラアイの色が変わる寸前に
「はあああああ!」
ヴアアアアア!
とワイズの声とともにアファームドの左腕が空に舞った
「成功!こうやって機体の武装を全部破壊して運動能力を無くしてしまえば」
「タイウをコック・ピットから助け出せる」
「そういうことだ」
並んで会話する二機
「よしもう一度しかけ...」
「いやぁたいしたものだ」
不意に、声が二機のコック・ピットに響く
「カオス!」
「カオス博士!」

第9話 「精神の爆発」 前編 終
  後編へ続く