第二話「泣いた分だけ、強くなれ」


輸送機の中
「だいぶ落ち着いたみたいね」
ワイズは答えずただ俯いていたままだった。
「まず私が何者か説明しましょう。DN社は知ってるはね?」
問うミシェー
「月のムーン・ゲートを発見し、それを隠し続けて、結果ゲート暴走時に非難を受け、O.M.Gを発動、これを成功させるが信用は戻らず、さらに9つのプラントにも見放され事実上崩壊した企業国家...」
顔を上げず淡々と答える。
「ええ、その9つのプラントの一つ[第8プラント・フレッシュリフォー]私はソコのまわし者よ」
「...」
ワイズは答え無い。自分のしたことがまだ頭から離れないでいたからだ。
「周りを..町を.人を...殺した...俺が...俺が」
ミシェーは話続ける。
「 私は上の命令で貴方達の学校に入り込み、即戦力になる子供を探していたの」
「なんで俺達の学校に...」
初めて問い返す。しかし顔には生気が無いままだ。
「あのシュミレーターは各プラントの端末に繋がっててね。それであなた方が何処の学校に通っているか調べたの」
「なんで子供に人殺しなんか..大人に..軍人にやらせればいいじゃないか...」
「上がね...[子供の頃から教育すればいい軍人になる]ってね...」
ミシェーの声も暗い。
「人殺しの教育...」
静かに怒りが芽生える。
「そうとられても仕方がないわね...」
「他にどうとれるんですか...あの機体は?」
ダテメガネを手で弄びながら問い掛ける。どうやら戦闘の時落ちたひょうしにひび割れしたようだ
「ベルグドルのこと?少なくともDNAの機体じゃ無いわ、おそらくここ最近で多発しているVR関連の事件に手を染めている人達ね。どこかの研究所が襲撃された映像で見た覚えがあるもの」
「じゃなくて!あのテムジンを輸送していた輸送機は、なんで町の上なんか飛んでたんだ!」
顔を上げ、テムジンを指差し、担任と部の顧問であった女性に疑問をぶつける。見ると彼女は私服でなく軍服ににた服を着ていた。
「輸送機のパイロットは[町に入れば攻撃してこない]と考えて...」
「でも攻撃された!だから...みんなが...死んだ...」
ミシェーが言い終わる前に結論を言い放ったしばし沈黙それを破るかのようにミシェーは話した。
「...あのベルグドルには生体反応が無かった」
「!?」
立ち上がるワイズ。
「そう、だからあのパイロットは死んでないの...」
申し訳ないように彼女は言う。
「仇すら...取れて無いってか...」
なんのために町を破壊し、関係の無い人の命を狩ってしまったのか、そう思いまたワイズは泣いた。
「泣いたら、泣いた分だけ強くなりなさい!」
語気を荒くし、続ける。
「ワイズ候補生、あなたは軍の機密に触れた為、身柄は軍があずかります」
「な...ふざけるなよ!」
「だまって聞きなさい!」
ミシェーの勢いのある涙声に負けワイズは黙った。
「復讐するにも、生き抜くにも、力は必要なのよ!頭上に怯えて死んでいくより、力をつけてみんなの分まで生き抜きなさい!」
悲しみと願いが混ざった声。
また沈黙、それは長い沈黙だった。そして今度はワイズがそれを破った。
「解りました...軍に入ります」
「本当?!」
それでもワイズが拒否すると考えていたミシェーは驚いた。
「生き抜きます...ダチの分も」



あれから30分以上が経過し、住み慣れた町はとっくに窓の風景から消えていた。
落ち着いた後も、ワイズはVRデッキにいた VRデッキには3機のVRがあった 1機目はテムジン、ワイズが戦闘で使った機体だ。左腕が無くなり装甲もやや損傷している 2機目は10/80と呼ばれるテムジンの量産機だ。ミシェーに聞いたらそれの強化型だとか、この輸送機護衛のために積んであるそうだ。3機目はミシェーの機体フェイ・イェンのカスタム機だ。残念ながらマントらしき物か掛けてあって詳しく見ることができない。
「まだいんのかい、好きだねぇ...もう落ち着いたか?」
とメカニックチーフ
「え?あ、はい」
急に話かけられびびるワイズ。
「んならいいがな...ふぅ」
「すみません。テムジン壊してしまって」
「気にすんな気にすんな!直しがいがあるってもんだよ、しっかしよく無事だったなぁ、あのベルグドルと戦ってよ」
「!?」
かなり驚いたワイズ。
「AI制御のVRをな、25機近く連続で破壊していたらしいぜ」
「それは...マジっすか?」
汗が伝う。
「マジマジ大マジ!って聞いただけだからなぁ」
笑うチーフ。
「ど、どっちですか!」
「さぁてどっちかねぇ
」 不意に艦内放送が鳴る。
「敵機接近ミシェー特佐迎撃願います。繰り返します...」
女性オペレーターの声。
「教官!教官って言ってよ!!」
マイクを引ったくったのかミシェー教官の声が艦内に響く。
「漫才か!なぁ?っておい?...あ」
とチーフ見上げると10/80のハッチが閉まる所だった。
「...通信準備...かな」



輸送機の格納庫ハッチが開く、そして10/80が降りる
「誰!?誰が発進したの?」
「そりゃワイズだ」
インカムを耳につけながら言うチーフ
「!?ほんと?」
インカムを引ったくりワイズに話かける
「ワイズ君?何してるの!」
ミシェー怒り声。
「教官?プッ・・・なんで学校口調なんです?」
しかしワイズは落ち着いている。
「吹いてる場合?なんで勝手に出撃してるの!?」
ミシェーは気が動転しているようだ。語気がかなり焦っている。
「処分ならあとで聞きます!敵機体のデータは?」
次は真剣な声。
「何生意気言ってるの!戻りなさい!」
「もう戦闘領域だわな」
チーフが言う。
「!...解ったわ今から説明する、ただし無茶はしないこと!いいわね!!」
「助かります!」



バイパーの残骸が転がっていた。そしてその横で10/80対バイパー&バイパー2が戦っている。
「さすがにニ機はキツいか?」
そのときバルカンが機体頭部をかすめる。
「危なっ!」
回避、しかしかわした先にはバイバー2のビーム・サーベルの刃が
「!!」
頭にはベルグドルのパイロットの声が響く。

死ね
「(ここで?...まだだ!まだ死んでたまるか!)」
ジャンプする、足部にサーベルがカスる。
「お前達で止まってたら奴を倒せないんだ!だから!止まってなんか、いられ無いんだよ!」
着地をブースターで速めつつビーム・ソードで斬る頭から真っ二つに裂けるバイパー2。
「2機目!次い!」
10/80のバイザーがワイズに呼応するかのように、光った。



敵3機の残骸を見つつ、ワイズは輸送機が来て回収してくれるのを待っていた。敵3機の残骸を見つつ、ワイズは輸送機が来て回収してくれるのを待っていた。
10/80のコックピットハッチを開けて上がってくる朝焼けを見上げ始める。
「泣いた分だけ強くなってみせすよ...絶対に」



少年達が見たベルグドルはまだ見ぬ敵RNAの一端だった
彼達はこれから起こる戦いの渦の中 どのように生きて行くのか



電脳暦a1年
人々は
それぞれの
物語を紡ぐ
遥かに続く
戦いの中で
GET READY! 
 


第二話「泣いた分だけ、強くなれ 終