第12話「First stage last encounter トラブル・スラッシュ」 後編


「覚えていますか?ワイズ」
「ストラグル!」
不意に通信機からストラグルの声が聞こえてくる
「この街は私と君が初めて戦った場所ですよ」
「…!!」
雪が積もったこの街は、確かにワイズが初めて戦った場所だった
「現在の技術は凄いですね…もうあの戦いの跡が完全に無い」
ストラグルが言うとうり一度は廃墟と化した街の一角は、すでに新たな建物もしくは道路になっていた
「煽ってんのか?」
ワイズが下唇を血が出る程に噛む
「そう聞こえたなら…君がそう思っているのでしょう」
ストラグルはそう言い終えると同時にトリガーを引く。そうすると鎌状の武器の先から紫の光の塊が放たれる
「ッ!」
アウト・サイダーが間一髪ジャンプで回避する
ドガア!
と音をたてて道路を大きく破壊する紫の光の塊
ワイズが攻撃の来た方をアウト・サイダーに向けさせると、ストラグルのテムジンが高層ビルの上から鎌状の武器をスナイパーライフルのように構えているのが見えた
「そこかッ!」
CBRのトリガーが連続で引かれると、真紅の光線が何本も目標に向かって飛び、高層ビルを破壊する
「避わしたか…」



「流石にやる…」
ワイズの攻撃を回避してビルの間に隠れたストラグルが言う
「(この武器単発か…しかしこの威力)」
ビルに自機の背をつけて、そこから道路を盗み見る
「(借り物の技術にしては上等ですよ、カオス博士?)」
ストラグルが朱の目を見開き、笑う
「これなら耐えきれる」



「何処だ!何処に居るストラグル!」
ビルの隙間を縫うように飛ぶアウト・サイダー
「これはどうだ!」
ストラグルのテムジンが鎌状の武器を振り被り、ビルの間から急に目の前に現れる
ビームを展開させた鎌の部分による二回の直接攻撃。一度目の攻撃で機体の左肩を切られ、二度目は何とかビーム・レイザーで止め、鍔刷り合いのようになる
「G・Bは」
ストラグルが言い始める
「長時間使用するとリミッターが作動する」
「だからどうした!」
「リミッターが作動すれば機体は強制的に停止する…その時が君の最後だ」
「そうなる前に貴様を殺す!」
アウト・サイダーが真紅の光を増し、ストラグルのテムジンをビーム・レイザーで吹っ飛ばす
「フフ…」
ストラグルは吹っ飛ばされた勢いに乗ってブースターを噴かし、バックダッシュのスピードを上げる
「また隠れるッ!」
ワイズはそれを追おうとしてアウト・サイダーを前へ飛ばす
その直後、ストラグルのテムジンが鎌状の武器を大きく振ると、巨大なビームの縦波が道路を削りながら進む
「なんだ!?」
ワイズは驚きの声を上げるとそのビームの波にCBRを打つが、ビームの縦波は勢いすらかえずアウト・サイダーを襲う 「ぐうぅぅぅ!」 ビーム・レイザーでそれを受け止めるが、相殺できずそのままアウト・サイダーの足が道路に跡をつける
「(G・Bは浮く力すら無くなってきたか)」
目に見えたG・Bの出力低下にストラグルは笑う
「あと少しか」
そしてまた鎌状の武器を構えるストラグルのテムジン
「この…ざけんなよッ!」
ビームの縦波を上空に受け流すとアウト・サイダーもCBRを素早く変形させて構える
両機の銃口がそれぞれの強烈な光を放つと、それは丁度両機の間にある空間の真ん中で激突する
「(長時間放出は不利なのは解っている)。ならばッ!」
ビーム放出を切り、激突した光の真横を装甲が焦げることを無視して駆けるストラグルのテムジン。
「!?」
ワイズも急いでビームの放出を切り迎撃しようとするが
ガクンッ
アウト・サイダーが停止する
「な?!」
ワイズが何かを言うおうとした時
バキイッ!
ストラグルのテムジンが蹴りを入れる
ズガアァァァ
数メートル吹っ飛んだアウト・サイダーが道路に仰向けに倒れる
「リミッター…」
ワイズがアウト・サイダーのディスプレイに表示された文字に言う
「私の勝ちの様ですね」
ストラグルのテムジンが歩いて近づく
「動けよ…」
ワイズがうめきながらスティックを動かす
「動きやがれ!」
それは叫びになり
「動けえええええ!!」
やがて罵声のような言葉に代わる
「フ…」
ストラグルのテムジンが、鎌状の武器をアウト・サイダーに向ける
その時、光を失って力無く倒れていたアウト・サイダーがまた真紅の光を放つ
「ハァッハァッハァッ」
肩で息を吐きながらアウト・サイダーを立ち上がらせるワイズだが
「グハッ…」
吐血した血が手を汚し、胸の傷口からは血がまた大量出てドック・タグを染める
「(G・Bの発動には相当の体力と精神力…)」
ストラグルが改めてテムジンを構えさせる
「(人によっては死にいたるらしいが)」
「ウアアアアアアアアアアッ!!」
ワイズが絶叫するように言葉を放つと、右目が一度深い緑色戻るように揺れてまた金色になる


イケナイ


「(限界が近いか)」
ストラグルが機体を走らせると鎌の部分でアウト・サイダーの首を狙う
「(強制的にアウト・サイダーを停止させる!)」
ヴオン!
「?!」
斬り裂いた筈のアウト・サイダーには実体が無かった。そしてストラグルのテムジンが後ろからの斬撃に揺れる
「何ッ?!」 ストラグルが気づいた時には、テムジンの右腕と鎌状の武器がバラバラになって爆発する 「(後ろか!?)」
ストラグルがテムジンを後ろに向かせると、かなり離れた道路に真紅の光を纏、アウト・サイダーが浮いていた
「(覚悟を…決めるべき…か)」
残った左腕で構えるストラグルのテムジン



「(あと少し…あと少し保てよ…俺の命!)」
ワイズが震える手でツインスティックを強く握り直す


アナタは


「消えろおおおおお!!」
ワイズがそう叫びながらアウト・サイダーを駆る


死なせません!


アウト・サイダーのディスプレイに次の文字が表示される


RETRI wake up


ワイズはその文字を気づかない
「機体が?!」
ストラグルのテムジンが機能停止する


System G・B compulsion stop


アウト・サイダーを包んでいた真紅の光が散って、丁度CBRを振り下ろそうとする処で機能停止する
「何で止ま…んだ…よ…」
そう言うとワイズの意識は深く閉じられた



数十分後
「…」
ストラグルがコックピットハッチを開けて回収の為に外に来た輸送機を見た
その辺りにはアウト・サイダーは居なかった



第12話「First stage last encounter トラブル・スラッシュ」後編 終
第一章完