第11話 「クリスマス・パーティ 中編


「あらサナシス居たの?」
冬花の言葉攻撃
「居ちあゃ悪いの?」
ギロっとにらみ返すサナシス
「別に?」
目を横に反らしなおもサナシスに不快感を与える冬花
「あんたが聞いたんでしょうが!!」
大声で威嚇するようなサナシス
「ふ、二人共やめてください!」
いい加減やばいと思ったワイズが声をかけるが
「ワイズさまはお静かに」
「ワイズは黙ってて」
聞いてくれない二人

「…」
少し二人から離れてから、あぐらをかいて本当に黙るワイズ。すこしへこんでいるようだ
「難儀やなぁワイズはんは」
ポンポンとワイズの頭に手を乗せる夏樹
「う〜い…」
低い潰れたような声で返事するワイズ
「(…そういやルミナさんは…?)」
チラッとルミナの方を見ると
「ほぅ…」
ルミナはペンダントを見てぽーっとしていた
「(あれは喜んでもらえてるのか…わかんねぇ…)」
彼にはまったく解らないようだ
トントン
「はい?」
後ろから肩を叩かれて振り返るワイズ
「い!?」
引きつった声で驚く
そこには目を光らし、まがまがしいオーラを放った男達が大勢いた
「(なんか凄い嫌な予感…)なんすか?」
生温い汗が背中を通る
「この女ったらしがあああ!」
「ワイズ・スカイフレン成敗!」
「死ねえええ!」
などとワイズの後ろに立っていた男達全員が口々に叫びながら飛びかかって来る
「予感的中ーーー」
あっと言う間にワイズが見えなくなる
(ちなみに横にいた夏樹は既に退避していた)

数分後…

「ゼィ……ゼィ…」
30人くらい居た男達を全員気絶させてワイズは生き残った
「つ、疲れた…」
フラフラとテーブルの上にあるグラスに手を伸ばすワイズ
「ははは!ご苦労ご苦労」
クイマが笑いながら横に来る
「ご苦労言うなら助けてくれよぅ…」
グラスにジュースを注ぐワイズ
「必要なかったじゃないか」
肩ポン
「そう見えたのか…」
縦線を顔に走らせながらジュースをすする
「時にワイズ」
「あんだぁ?(なんだ?)」
口から離しグラスをテーブルに置く
「手袋を反対から読むとなんだ?」
人差し指を起てて問うクイマ
「…ろくぶて?」
真面目に返答するワイズ
「正解」
クイマがニッと笑った瞬間
ガッ!ガッ!ガスッ!バキッ!ドカッ!ドゴオッ!(6Hit!)
「ぐはぁッ!?」
目にも止まらぬクイマの喧嘩殺法をまともに食い吹っ飛ぶワイズ
「い…いきなり何してくれんねん」
テーブルにつかまりながら立ち上る
「何、仇討ちだ」
クイッと倒れた男達の一角を親指で指す
「せ、整備班の連中かい…」
どうやら男達の中に整備班の連中が紛れていたらしい
「俺はチーフだからな」
フッと笑うクイマ
「ろくぶての割には蹴りが混ざって無かったか?」
「気分的な問題だ。流せ」
とまた笑う
「…うぅ」
なんとも言え無いワイズだった
そこにゼロが来る
「よう!無事だったかワイズ」
と言う
「そこそこな…」
ひきった顔で苦笑する
「じゃあ俺がとどめにパチキ(デコピン)でも」
スゥっと構える
「笑顔で構えるな!そして激しく拒否だ!」
急に元気(から元気)になってズザザッっと後ずさりしまくるワイズ
「フフフ…何故だ?」
じりじりと間合いを積めて来るゼロ
「お前のパチキ痛いんだよ!本気でとどめになるわ!」
「ちっ…」
構えの体勢とくをゼロ
「ちっ…じゃねぇよオイ…恨みでもあんのかい」
半泣したいワイズ
「なんとなく…イベントに花を…」
真剣な顔で言うゼロ
「イベントの花で俺を死なすんかい…」
肩を落とす
「冗談だ」
パッと表情を変えるゼロ
「ハァ…」
深く、深くため息をつく。その後周りを見渡すワイズ
サナシスと冬花は相変わらずなにかを言い合っていて、ルミナと夏樹が珍しく話しをしている。ルミナがこっちに気付くと軽く手を振ってくれる。それに答えてワイズも手を振る
倒れこんだ約30人の男達以外はそれぞれにパーティを楽しんでいるようだった
「(あれ?)」
何かに気付くワイズ
「秋草さんと先生がいないな…」
「先生はさっき呼び出し食らってたみたいだぜ?」
クイマが口に食べ物を放りながら言う 「誰に?」
「さぁ…所長じゃねぇの?」
「あり得えなく無い話しだな…文句言われてるのかもな」
苦笑しながらゼロが言う
「そういえば秋草はさっき外行ったみたいだったな…」
思い出したようにゼロが追加して言う
「そか…探しに行くかな…」
とワイズ
「センセと秋草にもプレゼントあんのか?」
「一応ね」
鞄をポンッと叩くワイズ
ゼロとクイマがワイズから少し距離を置いて
「フェミニストか」
「フェミニストめ」
そろって言う
「二人揃って言いますか!?」 ショックを受けるワイズ
「または女たらし」
「もしくは女たらし」
「…」
追加ショックのワイズ君
その時!キュピーン!とゼロの目が光った!
「スキありッ!」
パッチーーーン!
「いってえええええ!」
ワイズのでこにゼロのパチキがクリーンにヒットした


<研究基地指令塔>


「いったい何の用ぅ?」
ミシェーが少しのびた口調で呼び出したオペレーターに言う
「ほろ酔いになっている場合じゃないんですよミシェー教官!」
凄く焦った声のオペレーター
「そんなこと言ったってパーティから抜けてきたんだから…」
ブツブツと文句を言うミシェー
「教官!?」
オペレーターが大きな声でミシェーを威嚇する
「冗談よじょーだん。で?なんなの?」
オペレーターの声に微動だもせず、聞き返すミシェー
「はい、実はこの基地の通信手段が全て使用不能になっているんです」
「それは本当なの?」
「通信、電話、携帯、全てつながりません」
「ふぅん…?」
言い終わったあと、左手に持っていたグラスをあおるミシェー 「どうしましょうか?」
オペレーターがうっすらと汗をかいて聞く
「この状態になったのはいつ?」
「約5分前に外部との連絡を取っていた時に、急に通信が途絶えて…」
「それから再度通信は?」
「さっきから行っています。それでも連絡が取れないからミシェー教官を呼んだんですよ」
少し憤慨した様な表情のオペレーター
「それはそうね…基地警護隊との連絡は?」
「忘れたんですか?彼等もパーティでしょう。いいですよね〜みんなパーティでれて!私だけここで通信管理なんて…」
ディスプレイを見たまま愚痴るオペレーター
「はいはい愚痴らないの」
ミシェーが軽く叱る
「はぁい…」
「…じゃあ私が変わる?」
とミシェー
「え、いいんですか!?」
こっちを向き直り、一気に明るくなる
「ええ。でも少ししたら呼び出すかもよ?」
意地悪く笑うミシェー
「それでもいいです!早速行きます!」
席を立つと、あっと言う間に階段に消えるオペレーター
「…すぐ呼び出すってのは冗談なのに。…それともよっぽどパーティに出たかったのかしら?」
オペレーターの席に座りながら言うミシェー
「さてと…」
グラスを遠くに置き、キーボードに手を走らせる
「原因を探らないと…みんなの楽しい時間を潰す訳にはいかないからね…」
キナ臭く感じたミシェーは単身、通信妨害の原因を探り始めた


<屋外>
「…だはっ」
地下ハンガー(今はパーティ会場だが)から屋外に出てきたワイズは鞄を地面に置き、手すりにうつ伏せによっかかりでっかいタメ息を吐く
「…まだでこ痛ぇ…」
雪が舞い落ちる夜空を見上げながらつぶやく
「雪で冷やすか…」
ぶっ倒れて積もった雪にうもれてしまいたいくらい投げ槍に言う
「倒れたあと雪払うのもだりぃな…」
「はぁ…」
うつ伏せから仰向きによっかかり直すワイズ
「だりぃ…」
雪が舞う夜空を今度は仰ぎながら 「だりぃだりぃだりぃだりぃだりぃだりぃッだりいッ!!」
と目をつむって叫ぶ
「…ストレス溜まってるんかなぁ」
そう言うと手すりから勢いをつけて立ち上がる
「…誰もいねぇよな?」
周りをきょろきょろと見るワイズ。そしてその周りには人の気配は無い
「…よし…歌うか」
スッと姿勢を正して、ある曲を歌い出す。ワイズの声は冷えた空気を伝い、辺り一面に響き渡った

約15分後

「♪…」
三曲目を歌い終わり
スゥ…
と大きくワイズが息を吸った時
パチパチパチ
と不意に手を叩く音が聞こえる
「!?げほっげほっ」それに驚きむせるワイズ
「誰だッ!?」
手を叩いた音のした方向にガンを飛ばすワイズ
「…何故にらむ?」
その方向には手を叩いた形にしたままの秋草が驚いた顔で居た
「秋草さんでしたか…あいつ等かと」
ホッとした顔になりまた手すりによっかかるワイズ
「あいつ等?」
秋草が横に来て聞く
「クイマかゼロかと思いました。前同じような所を目撃されてバカにされたもんでね」
苦笑混じりに答えるワイズ
「まぁ…雪の中一人で大声出していたら何ごとだとは思うだろうな」
ははっと笑う秋草
「あいつ等はそこから更に発展させてからかうので始末に終えない…」
目を細めて言うワイズ
「いいおもちゃか?お前は」
腕を組みながら言う秋草。彼女のいつものポーズだ
「クイマ曰く[ワイズはからかいやすい]だそうで」
他人ごとのように言うワイズ
「ご苦労なことで」
「ご苦労なことなんです」
秋草が言った後にワイズが同じように続ける
「{何も言わず、聞きもしないで遠ざかれるよりは何倍もマシだけどね…}」
と言葉に出さず思い出すワイズ
「ところでワイズよ、何故こんな所で歌っているのだ?」
秋草が聞いて来る
「…答えたほうが良いですか?」
少し嫌そうに声を出すワイズ
「うむ」素直にハッキリと言う秋草
「…まぁストレス解消です」
雪以外特に何も無い滑走路を見ながら言うワイズ
「ストレスか…」
秋草は手すりによっかかりながらワイズと同じように見る
「まぁ…下手の横づけレベルなんで大声出してるだけに聞こえたでしょうけど」
苦笑してみせるワイズ
「いや…」
秋草がワイズに向き直る
「とても心に響いたよ…」
ワイズの目を見て言う秋草。その表情はいつに無く穏やかで、女性らしかった
「え…」
その秋草を見てドキッとしたのか、赤く固まるワイズ
「なんだその[え]とは」
この言葉を出した時、秋草は普段の表情に戻っていた
「あ…いや!てっきり笑われるか馬鹿にされるのかと…」 しどろもどろのワイズ
「私はやつ等と同レベルか」
ハァと下を向きながらため息を出す秋草
「あ、すいません!そんなつもりじゃ」
手を大きく振り、焦るワイズ
「冗談だ」顔を上げて笑うフフッと秋草
「冗談ですか…はぁ」
ドッと疲れるワイズ。そしてふと思う
「そういえば秋草さんは何故ここに居るんですか?」
それをそのまま口にだす
「お前の見張りだ」
少し悲しそうな目をしてまた滑走路に落ちる雪に目をやる秋草
「見張り…?俺の…?」
疑問符を浮かべてワイズもまた同じ方向を見る
「それも冗談ですか?」
と聞く
「50%はな」
「50?」
秋草がまた向き直る
「パーティ裏でお前が何か暗躍していないかと…」
凄く真剣な顔で言う
「俺が何を暗躍するんですか!」
オイッとツッコミを入れそうな勢いで返すワイズ
「あ、そうだ」
鞄に手を延ばすワイズ
「パーティで思い出した」
と一つ箱を取り出す
「はいこれ」
「なんだそれは」
秋草がけげんな目で見る
「うーんと…これもクリスマスプレゼントになるのかな」
ちょっと苦笑いして言うワイズ
「…私にか?」
秋草手に取ってからが聞き返してくる
「ま、中はこないだのタオルの御返しのタオルだけどね」
そう言うとまた鞄に手をつっこむ
「…普通そういうことは言わないものなのではないか?」
秋草が呆れた顔をする
「多分そうなんだろうね。はい」
そう言いながら秋草が持つ箱の上に小箱を置く
「今度はなんだ?」
「実はそっちがプレゼントだったり」
と笑うワイズ
「え…?」
驚いた表情の秋草
それが嬉しさからと言うのはワイズには解らなかった
「あ、ありがとう」
うつむき赤くなった顔を隠し、震える声でお礼を言う秋草。ワイズには見えていないが、秋草は肌が白いので赤くなると真っ赤に見える
「あ、開けてもいいか?」
まだうつむいたままで言う秋草
「どうぞどうぞ」
笑顔で促すワイズ
ガサガサと包装紙を取る音が二人の間に響く。そしてその中から新たに現れた小箱を開ける

第11話 「クリスマス・パーティ」中編 終