第一話「戦闘、そして」  第一話「戦闘、そして」


テムジンに向かうさなか、クイマの小形カメラが目に入る。
「(ダチの仇をとるんだ!相打ちでも構わない...奴は殺す!殺してやる!)」
瓦礫を越え、ガラスを踏み、涙をぬぐわず、何度もこけそうになりつつもやっとテムジンの元へついた。
ベルグドルは約5〜10離れて立っている、まるで戦う相手の目覚めを待つかのように 木登りの要領でテムジンを登る。シュミレーターゲームで慣れたように(シュミレーターゲームはコックピットとなんら変わらない形をしていてハッチから各スイッチまで表現されている)ハッチを開けシートに体を滑らせる。
<搭乗者確認、音声ナビゲート開始、氏名を>
OSが機動する。
「ワイズ・スカイフレンってああ!」
馬鹿正直に答えてまずったか?とワイズは思った。が、
<了解、...登録完了>
助かったと思った。どうやら初期登録はされて無かったらしい。
(「登録は後で軍が消すだろ)」
そう考えるとツイン・スティックを握り絞める。
<ハンガー解除>
ハンガーに固定されていたテムジンは束縛かは解き放たれて、地面に足を着ける。
<戦闘システムに移行開始>
別のハンガーにあったビーム・ライフルをテムジンの手に取らせる。
「(後ろ−壁、左右−壁、上−天上、下−床...正面突破以外は、棺桶行きだな)」
シートに座ったせいなのかワイズは不思議と彼は落ち着いていた。テムジンは構えた、ゲームセンターで見たていた構えだ。
<戦闘準備完了>
聞き慣れた言葉が頭で響く

ROUND-ONE

GET READY


二機は同時に攻撃した。ベルグドルはホーミングミサイル、テムジンはビーム・ライフルの刃の部分にビームを展開、薙ぎ払いソニック・ウェーブを。
ゴオォォォン!
互いに相殺され煙に視界が阻まれるガラスが割れる音、コンクリートが崩れる音等が処理しきれない情報として耳に伝わる。
「ゲームじゃソニック・ウェーブが勝つんだが...なっ!」
ビーム・ライフルは薙ぎ払いで右の壁に減り込んでいたが、それをかまわずダッシュ、結果ライフルは壁から抜けたビルとビルの合間、そんなVRにとっては狭い空間にも関わらず、ワイズは煙を払うかのようにテムジンを走らせたで先程までの焦りが別の人のモノの煙を突っ切りベルグドルを確認する。
「だあああああ!」
再びビームを展開させライフルを横に払う。
ヴァァァ!
間髪ベルグドルは十時路を横に動きホーミングミサイル・ユニットの右側だけを斬られるだけで済んだ。
「(速い...)」
斬撃をかわされワイズはこう思った
「(流石に重く感じる..現実だからか)」
そして首を振って思考を変える。
「そんなことはどうでもいいんだ...絶対に殺す!」
再び感情が流れ出す。今の動きで敵機体には人が乗っていると確信したのだった。ベルグドルは十字路のビルの間から右腕だけを出すと、グレネードをロックをせず乱射した。
「ならコイツで!」
アンダースローでパワーボムを投擲、最初のグレネードにぶつかると、パワーボムは轟音とともに爆炎のドームを作り、グレネード達を掻き消した。言うまでもなくビルも幾つか破壊された。爆炎を歩いて抜けるとベルグドルのいるべき方向を見ると、すぐそこまでナパームの火が目の前にまで来ていた。これをジャンプでかわすとライフルを打った、しかしバックダッシュでかわされさらに左肩のホーミング・ミサイルで打たれた。
「!?」
着弾、機体は地面に落下。ワイズもシートに頭をぶつけ、ダテメガネが落ちる。
<左肩に着弾、損傷重大>
頭にある文字が浮かぶ

YOU LOSE


「まだ、まだ死んじゃいない!!」
頭に浮かんだ文字を掃うように叫ぶ。
「(これが...これがVRの戦い)」
テムジンを立ちあがらせようと動かした時ベルグドルがテムジンの腹部に足を乗せ踏み付けてきた。
「死ね」
右手のグレネードをコックピットに向け、いつ拾われたか解らないこっちの回線を使って言い放つ。
「(敵の...ダチの仇の声!)」
ワイズの右目が深い緑から金に変わる。
「..俺独りで...死ぬかよおおおおお!」
テムジンの左手から放り投げられたパワーボムは、敵ベルグドルの右腕第二間接に当たり爆発、二機の間に爆炎が広がる。
ガアアアアアン!
敵のベルグドル右腕大半を失いビルに倒れ、テムジンは左腕を失いつつブースターで無理矢理立ち上がる。
「ハァ..ハァ...ハァ....ハァ」
まだ落ち着かない息を抑えテムジンをベルグドルに向ける。
ダダダダダダダッ
ベルグドルのコックピットから機銃が打たれる、人では無い、機銃がコックピットから顔を出していたのである。
「!?」
咄嗟のことで反応が遅れる。しかし、
<装甲表面に損傷軽微、当たり続けると危険>
それを聞くとワイズは
「胸部じゃなきゃは頭か...とにかく死ねえええええ!」
何か似た状況を思いだしていた。ゲームかアニメか、何かは解らないが彼はそれを実行した。テムジンのライフルを敵機体頭に突き刺したのだ。
<敵機体沈黙>
「...クッ」
敵を殺しても悲しみは去らず、友の死と言う現実が感情に押し寄せて来る。
「うああああああああああああ!」
ベルグドルの頭に刺さったままのライフルをビーム展開させ股に向かってソードを振り抜いた地面に刺さったソードを無理矢理引き抜くと、ベルグドルを何度も何度も斬った。まるでダダッ子が親をポカポカ叩くように。
 何回斬ったか解ない、ライフルのエネルギーは尽きて既に鈍器で叩くかのように斬り付けていた不意に通信が入る。
「...大丈夫?ワイズ君」
「先生!?みんなが...みんなが!」
先生とは電脳部顧問兼担任のミシェー先生である。何故この回線を先生が知っているか聞きもせず、ただ縋るように話かける。
「解ってる...全部モニターしてたから...」
「!?なんで...」
「...今から回収しに行きます。話はそれからで」
「今!今説明してください!」
苦しかった、疑問と悲しみばかりで。
「周りを見なさい!そんな所で...そんな状況で話なんかできない!」
涙声。
「!?」
ワイズは改めて周りを見た。焼け野はらといっても過言ではない街。
「う...うああああああああああ!?」
 少年又は泣いた。自分のしたことに恐れと怒りと悲しみを感じて。そして彼が回収されたのは、それから1時間以上たった後だった。


第一話「戦闘、そして」 終