Test Skill Or Heart?


「…」
正座で黙々と洗濯物を畳むクレスセント001S…月を右前に財布と睨め相う俺
「…まぁ当然と言えば当然だな」
中身は危険域に到達している
それはそうだ
少し前まで一人暮らしであまり必要以上には稼いでいなかったのだ
「(倉庫には…)」
暫く行ってないから覚えて無いな
「(俺がクエストを頑張るにしても少々心許ないな…)」
…試して見るか
「月」
財布を後のポケットに仕舞いながら呼ぶ
「なんでしょうか?マスター」
こちらを振り向く月
「この部屋に置いてある武器で自分に扱えそうな物を適当に選べ」
月に見取れ無い様に立ち上がり、部屋内を歩く
「何故ですか?」
近くに放置されたハンドガンを手に取りながら聞き返す月
「これから二人で出掛けるからだ」
俺はサングラスを外しながらそう言った


「ここで何をすればいいのですか?マスター」
何故坑道エリア1に連れてきたか内容を話されていない月が質問してくる
「これから月の戦闘適正を見る」
俺はヒューキャストの鎧を着込んだ姿で月の前に立つ
「選んだ武器を出して見せろ」
「はいマスター」
直ぐさま丁寧な動きで武器をアイテムボックスから取り出して見せる月
「レイガンとレーザーか」
外見がレイキャシールの月には調度いいか
「選んだのはその二つだけか?」
「はい、何か問題でもありますか?マスター」
あまり表情を変えずに答える月
「いや取り敢えずはその二つで戦って貰っていい」
そう言いながら俺はDBの剣(軍レプリカ)を取り出す
その間に坑道のエネミーであるギルチックが5体横一列に現れた
「こいつらを一人で倒して見るんだ」
俺はアギトを右肩に乗せ、月の動きを見る体制をとった
「はいマスター」


右手にレーザー、左手にレイガンを携えた月が動く
右からニ発、左三発全てギルチックそれぞれの頭部目掛けての射撃
「着弾確認、誤差修正、次攻撃対象選択」
5体のうち真ん中3体はダウン、立ち残った左右両端のギルチックにそれぞれの手で射撃を浴びせる
「2機撃破確認、次攻撃対象再選択」
立ち上がったギルチック3機が右腕を前に出してレーザーを放つ
それを月は最小限の動きで全て回避して
「全弾回避、迎撃」
3機全機体の右肘と胴体を銃撃で砕いた
「敵影0」


「(予想以上か)」
俺は月の戦闘能力の高さに驚いていた
「戦闘終了しました、マスター」
まったく疲れた様子も無く報告する月
「ああ、お疲れ月」
一応労うが
「いえ、この程度では疲労はありません」
これだよ
まぁまだ目覚めてからそう経過していないから反応がやや淡泊なのは仕方が無いのかもしれないが
「月」
「はいマスター」
「お前ハンターズ登録してクエストを受けろ」
「何故ですか?」
「結論から言えばメセタが無いからだ、二人暮らしになったからな、だから月にも稼いで…」
「敵影!」
目を粒っていたせいか、はたまた説明に集中していたせいか俺は真後ろにカナディンが出現した事に気付かづ
「マスター危ない!!」
月が俺を庇ってカナディンの電撃受けた
「月!?」
直ぐさま倒れ落ちた月を抱き抱える俺
「大丈夫か!おい!!」
返事の無い月を揺らしているとカナディンのロックレーザーが月に触れる
「邪魔だ!!」
俺の投げたDBの剣が月を傷付けたカナディンを空中で破壊する
「マ、スター?」
月が意識を取り戻す
「大丈夫か!?」
揺らすのを止めて焦りと不安を隠さず聞く
「申し訳ありませんマスター、手足の回路がショートしてしまい一時的に行動が制限されてしまいます」
沈んだ表情で損害状況を説明する月
「致命傷ではないんだな!?」
まだ焦りのある俺の声
「復旧に約360秒を要しますが、機能停止にはなりません」
月の表情は依然沈んだままだ
「そうか…致命傷ではないんだな…」
俺は思わず溜息を零して首をたれる
「本当に申し訳…」
月がまた謝罪をしようとしたが
「帰るぞ」
月に続きを言わせまいと抱き抱えたまま立ち上がった


ミスったな…俺が背後をとられてせいで月が攻撃を受けるとは
「…マスター」
やはり月をハンターズに入れるのはよそう
「マスター?」
二人分の生活費は俺が多少無理すれば何とかなるし
「マスター!」
何よりも…
「マスター!!」
「!!」
普段の月からは想像出来ない声に我に帰る俺
「すまない、なんだ?月」
「私のハンターズ登録の件ですが…」
「ああ、登録は止めてお…」俺が止めておこうと言いかけた時
「私は!私は登録して頂きたいのですが…」
だんだんとフェードアウトするような声で月が言った
「何言ってる!さっき…」
俺は思わず怒りの声を出したが
「マスターの役に立ちたいんです!」
月は俺の腕から身を乗り出し顔を近づけててそう言った
「…」
ヒューキャストの仮面を付けていて良かったと思った
でなければ多分俺は月から顔を逸らしていただろう
…恥ずかし過ぎて
追記すると俺顔真っ赤だ
「…落ちるからじっとしていろ」
精一杯平静を装って月を注意する
「…すみません」
それを受けて月は元の体制に落ち着く
「でも私は…」
役に立ちたいと言いたいのだろう
月は役になら立っている
いや役に立つなんてもんじゃない
月と時を過ごすようになってから俺は考えられない程変わった
それだけで感謝を超えた感情だってある
それ故か
俺はとんでも無く恐れている
月が傷付く事を
月と別れる事を
月を失う事を
だが
「…」
目だけで月の表情を見る
「…」
こんな表情されちゃあな…
それに出来るなら
「条件が付きなら許可してやる」
月の望みに答えてやりたい
「あ、ありがとうございますマスター!」
月の笑顔を見たい