Story9 時奈宅 迷探


モネストが居た場所

「ふぅぃ…」
溜息をしながらツインブランドの刃をしまうワイズ
「凄いラゾンデですねワイズさん」
そう言いながらジノが近付いてくる
「そう?」
ジノに向き直りながら言うワイズ
「そうですよ、私のラゾンデの威力なんかより何倍も」
笑顔で言うジノ
「何か嬉しいのかい?」
ワイズの目にはその笑顔がと凄く明るく見えた
「あ、えっと、まさかこっちでも会えるなんて思ってなかったので」
と俯きながらも笑顔で言うジノ
「こっちで?」
何か引っ掛かる言葉に反応するワイズ
「あ!いえ!なんでもありません!!」
大焦りで両手を降る
「そんなに焦らなくて…も」
そう言いながらワイズが大きく揺れる
ワイズさん!?
「…ね……む」
そう言うとワイズはその場に倒れた



時奈宅

「…ん?」
賢士が目を開くとそこには数える程度に見たことがある天上
「時奈先生ち?」
まだ焦点が合わない状態で上半身を起こす
「どうやってここに来たんだ俺…」
頭を掻きながら記憶を探る
賢士さん!
右横から声がする
「(え?ジノさん?)」
声の方向に顔を向けると
「よかった!気がついたんですね!」
そこには涙を貯めた時乃が居た
「転校生」
一瞬、時乃がジノに見えた賢士は目を擦る
「どうしました?目の調子悪いんですか?」
心配そうに言う時乃
「いや違うけど…」
はたと思い出す賢士
怪我ないか!?
ガシッと時乃の両肩に手を置いて聞く
「あ、は、はい」
顔を真っ赤にしながらなんとか答える時乃
「こら賢士」
反対側から別の声が聞こえる
「?」
賢士がその声がした方向を向くと氷水が入った袋が顔面に直撃して落ちる
時奈先生痛いよ!
鼻の辺りを押さえて言う賢士
「五月蝿い、我が家の姫に馴れ馴れしくも触れおってからに」
仁王立ちで言う時奈
「ね、姉さん!賢士さんは悪く無いでしょ!!」
焦りながら講義する時乃
「人がわざわざここまで運んでやったと言うのに、この恩知らずめ!」
時菜、時乃の話を聞かず賢士を叱り続けるの図
「って時奈先生が俺を運んでくれたんですか?」
顔から手を離して聞き返す賢士
「そうだが?何か文句あるのか?」
眼光鋭く賢士を睨む
「いや文句なんて言いませんて!」
落ち着いて、と手でジェスチャーしながら言う賢士
「賢士さんが倒れていた所にたまたま姉さんが車で通ったんですよ」
時乃が反対側から説明してくれる
「そうなのか」
そう言ってから少し考え込む賢士
「どうした?」
気になって声をかける時菜
「転校生、時奈先生、その場所には俺の他に誰かいませんでした?」
思い切って聞く賢士
「いや、顔色悪く倒れた賢士と泣き疲れた時乃しか居なかったぞ」
姉さん!
時乃、姉のジョークに怒る
「…そうですか」
不可解そうに言う賢士
「誰か他に居た、ような気がするのか?」
時奈が真剣な顔で聞いてくる
「いや、多分俺の気のせいでしょう」
ははっと笑ってごまかす賢士
「…まぁ寝不足で道ばたに倒れるくらいだからな、幻覚でも見たのだろう」
回転式の椅子に座り、口に手をやって悪く笑う時奈
「…なんで寝不足って知ってるんですか」
ジト目で時奈を見る賢士
「私と潜った後だろうが、天然かお前は」
ジト目で返される
「そうでした…」
首を曲げて落ち込む賢士
「姉さんあまり賢士さんを虐めないで」
見るに見兼ねたのかそれとも本当に可哀相にみえたのか、時乃が賢士を庇う
「転校生はいい奴だなぁ」
賢士、泣いて時乃を敬う
「そういえば時乃」
時奈のロックが
「何?姉さん」
あんたたしか賢士が名前で呼んでくれないって私に愚痴ってたよねぇ
時乃に向く
ねっ、姉さん!それは言っちゃイヤだって!!
立ち上がって凄い勢いで焦る時乃
「他にもいろいろ言ってたわよねぇ…たとえば」
わー!わー!
時菜の前に立ち両腕を激しく振りながら大声を上げる時乃
「(鬼かアンタは…)」
と賢士が心で時菜を毒づく
「とまぁお遊びはこのくらいにして、賢士」
時乃を抑えながら時奈の声が変わる
「なんですか?」
その声に思わず耳を澄ます
なんで私の家に来たのにお前はGCのメモリーカード持って来て無い!?
大声でハッキリと時奈
「…」
タイムラグ
あんた何時俺の持ち物調べた!?
立ち上がって突っ込む賢士
突っ込みの間が長い、突っ込み自体が甘い、罰として家までメモリーカードとって来なさい」
誰が採点してくれと頼みましたかッ!?ってか何でメモカ!?
「三人でマルチプレイしたいから」
「なんっ…って三人?」
賢士が普通に聞き返すと時奈はいつの間にか正座していた時乃を指差す
するとおずおずと時乃がメモリーカードを見せる
「それ…時乃さんの?」
取り敢えず聞いてみる
「は、はい」
ビンゴ
「故に君の拒否権は凍結された、ほれさっさと取りに行け」
そう言いながらGCの準備をする時奈
「…少しかかりますよ?」
「先生は寛大だから特別に待っててやろう」
「了解」
玄関に向かう賢士
「あ、賢士さん!」
時乃が呼び止める
「ん?」
「ありがとうございます」
深々と正座でお辞儀をしながら言う
「気にしなさんな」
明るい声で返して靴を履く
「さてと」
履き終わって立ち上がり
「時奈先生、運んでくれてありがとう」
言い忘れ無いように言う
「感謝はいいから、さっさと戻って来なさい」
そっけなく、されど嬉しそうに答える時奈
いえっさ、じゃ言ってきます!」
玄関のドアを空けて賢士は走って行った
「…ンフフ
ど、どうしたの姉さん?
時奈の変な笑みに少し引く時乃
「良かったわね、一回だけどワイズに名前で呼んでもらって」
と時乃の顔を楽しそうに見るながら言う
あ!
瞬間、時乃の顔が赤くなり煙がふく
ういういし〜
笑う時奈
「ね、姉さんうるさい…」
完全に俯いて小声で言う時乃
「あ…れ?」
ふと引っ掛かる事に声が出る時乃
「何?どうしたの」
「姉さん…ワイズって?」
「なに賢士から聞いて無いの?」
右眉毛を上げながら時奈が溜息を吐く
「ワイズってあいつのメインキャラの名前よ」



モネストが居た場所

「エネミーも、血溜も、姿形も無しか」
足を止めて転がっている石を蹴り上げる俺
ハァッ
そしてもはや原型の無いマウンテンバイクを見る
「あれは現実で俺はオレななれた」
俺とは賢士の事、オレとはワイズの事だ
「…ジノさんは何処いったんかな?」
俺はそんな独り言を言って、壊してしまったマウンテンバイクの言い訳を考えながらメモリーカードを取りに家へ向かうのだった