Story8 屋外 同調

賢士の部屋

「休憩〜」
コントローラーを右手に握ったまま敷布団に寝転がる俺
「…ってもう昼じゃねぇか」
顔を時計に向けると昼の12時を回った所だった
「え〜と1、2、3…16時間もPSOやってたのか俺」
普通にオンに入って、仲間んとこで雑談して潜って、ジナに付き合ってレベル上げして
「…我ながら廃人指数が上昇してますなぁ」
苦笑しながら上体を起こし、セーブをしてGCの電源を切る
「着替えてなんか飯でも買いに行きますかね」


マウンテンバイクで移動中

「くあ…ねむ…」
マウンテンバイクを立ちこぎしながらあくびをする賢士
「(そいや、昨日はあっちに飛ばされなかったな)」
左手で目を擦りながらそんな事を思う
「(いや、飛ばされると言う表現は変か、なんかワイズと同調するみたいな感じだし)」
角を曲がり赤信号で自転車から下りる
「(ワイズとの同調が影響してるのかしらんが俺の身体最近なんか好調だし)」
信号が赤から青に変わり、賢士は自転車を押して横断歩道を渡る
「(…いろいろ考えなきゃならないんだろうけど)」
マウンテンバイクにのりなおして走りだす
「足ふらふらする気するが、取り敢えずは昼メシだな昼メシ」
そう言った数秒後、人だかりが目に入る
「なんだ?」
気になって近付く賢士
「何かあったんですか?」
近くの男性に声をかけて聞いてみる
「なんでもカラスくらいの蚊が車にぶつかって血溜りになったんだと」
男性は困った顔で言う
「カラスくらいの蚊ぁ?」
賢士も困った顔で復唱する
「目撃者が数人居るんだが大体そんな事を言ってるのさ」
そういうと男性は両手を上げながら去って行く
「(ようはデカすぎる蚊ってことだよな?)」
そう考えながら血溜を見てみる
「…?」
違和感
「(似た血溜を見た…ような)」
自分の記憶を探り始める賢士
「賢士さん」
「!」
右横からの声に反応して探りは途切れ、首は声の方向を向く
「転校生」
目の前には買物袋を持った時乃が居た
「こんにちは賢士さん」
お辞儀して挨拶をする
「こんちは、買物?」
右手を上げて言う賢士
「いえ、これから姉の家へ昼食を作りに行こうかと」
微笑しながら答える
「ジ…時奈先生と家別々なんだ?」
ジナと呼びそうになるところを堪えて時菜先生と呼ぶ
「はい、姉さんは一人暮しをしたくて家を出たんです」
そう言ったあと時乃の目線が賢士の見ていた所へ移る
「何かここにあったんですか?」
「え?」
賢士も視線を移すと、その場所には血溜は無かった
「(消えた?なんで?)」
賢士が驚いていると
「賢士さん?どうかしましたか?」
時乃が心配そうに声を出す
「あ、いや…」
賢士は少し歯切れ悪く
「気にする事じゃないよ」
と言った
「(蚊が俺の予想通りなら、転校生をまた怖がらせるかもしれないからな)」
精一杯時乃に勘繰られ無いように
「そうですか?」
それがこうをそうしたのか時乃は全くその事を気にした様子はなかった
「さてと!じゃ俺は昼メシでも買いに行くかな」
そう言ってマウンテンバイクに乗る賢士を
「あ!賢士さん!」
呼び止める時乃
「ん?何?」
マウンテンバイクに乗ったまま聞き返す賢士
「こないだおごってもらったお礼にご一緒にどうですか?昼食」
やや頬赤らめながら俯き加減で言う時乃
え、マジで?迷惑じゃない?」
賢士にとっては凄く嬉しい提案
「はい!是非」
長い髪をなびかせるように顔を上げて嬉しそうに言う時乃
「さんきゅ!じゃあ時奈先生の家だね。後ろどうぞ」
「いいんですか?」
少し戸惑う時乃
「俺家知ってるし、善は急げと言うし!ささ!」
実はかなり空腹な賢士
「じゃあ…お願いします」
そっと、左側に背が行くように賢士の後に座る時乃
「じゃ、つかまっててな」
そう言うとまずはゆっくりとペダルを踏み出す賢士だった


二人乗り移動中

「賢士さんの家は」
傾斜を下ってる時、転校生が話かけてくる
「姉さんの家に近いんですね」
「そうかもな、コイツで5〜6分ぐ…!?」
ぐらい、と俺が言おうとした時前方から何かが飛んできくる
転校生悪い!!
はい?!
左横にバランスをかけわざと左側に倒れ、何かを回避する
「大丈夫か?転校生」
見ると淡く紫がかったワンピースに少し汚れがついたみたいだったが
「だ、だいじょうぶです」
よかった、特にどこか痛めてはいないようだ
…頭さすってるけど
「でもどうしたんですか?急に」
「あいつだよ」
俺は転校生が言い終わる前に何かが居る方向に顔向ける
「え…」
「ごまかすのも無理だよな…」
カラス並の大きさの蚊
「モス…マント…」
転校生の声が震えて響く
「転校生」
「…はい?」
前よりは動揺してないみたいだ
「逃げろ」
俺はそう言いながらマウンテンバイクをに持ち上げてゆっくり近付いてくるモスマントに立ち向く
「え…でも…!」
走って逃げろ!なるべく遠くに!!
「ッ!!」
その俺の声に逃げるように走る転校生
「悪い、転校生」
俺はマウンテンバイクを適当に構えて力一杯モスマントを殴る
するとモスマントは地面に落ちて血溜に姿を帰る
「よしなんとか戦える」
筋力も反応も何もかも、普段の俺より何故か上だ
「警察に通報しても来てくれるか解らんし」
モスマントが居るってことは吐き出すモネストが居るってこと
そして急がないとモネストはモスマントが尽きるまで吐き出し続けるってこと
「急がないと被害者が出る…かもしれない…」
その時羽音が聞こえてくる
「二匹…」
さっき最初のが飛んできた方向から来る
「つうことは本体はそっちかな?」
俺はマウンテンバイクを構え直す
行くぜ!蚊ども!!


「はっはっ…」
待って
「なんで私逃げてるの?」
また賢士さんは戦ってるのに
「何か」
また何か出来るかもしれないのに
「賢士さんを」
確かな意志が私達を
助けたい!
シンクロさせる


「本体に近づけば危険になるよなやっぱ」
モネストを前に俺の周りにはモスマント10数匹
「さて…どうしたもんか…」
マウンテンバイクはスクラップ同然、回りは動けない程に敵だらけ
「せめてモネストだけでも…」
とモネストを睨むと目の前にモスマント数匹が並ぶ
「(こいつらを残したらやっぱやばいよな…)」
目の前の数匹のモスマントが一斉に突っ込んでくる
野郎ッ!
そいつらにスクラップ同然のマウンテンバイクを投げ付けるが3、4匹が間を摺り抜けて突っ込んで来る
いくら普段の俺とは上でもワイズの能力は無い
「ッ!!」
正直、自分の終わりを覚悟した


ギゾンデ!!
賢士に向けて突っ込んだモスマント達は賢士の後方から飛んで来たギゾンデに全て打ち落とされる
「賢士さん大丈夫ですか!」
ギゾンデを放った主、フォマールのジノが賢士に駆け寄ろうとする、が
え…!?ワイズさん!?
賢士が居た場所にはワイズが立っていた
「…何がなんだかまったく解らない状況なんだが」
とワイズ
「え?え?」
しかしそれはジノも同じだった
だがモスマントは待ってはくれない
「とにかくジノさんさんきゅな、ギゾンデ援護」
ワイズがそう言う間にモスマント達全てがワイズ目掛けて襲い掛かる
ワイズさん危ない!
ジノがそう叫んだ直後
ラゾンデ!
蒼の雷がその場に飛んでいた全てのモスマントを消した
「なんてラゾンデ…」
ただただワイズのラゾンデに驚くジノ
そんなジノをよそに
「これで終わり」
右目を金色にしたワイズはモネストをツインブランドで斬り刻んだ後だった