Story7 戦いのいしずえ




「ふぅぃ…」
封印ノダチに付着したエネミーの血を振り払うオレ
「どうした、もうバテたか?」
肩にソウルイーターを乗せてキリークさんが言う
「いや全然」
取り繕うように返答するオレ
「なら急げ」
短くそう言いゲートをくぐるキリークさん
「はいはい」
封印ノダチを肩に担いでキリークさんの後を追う


家に帰って晩飯後、オンラインに繋いだ瞬間俺はまたこちらに繋がった
今回はクエストを受けた直後に繋がったので同行の相手がいた


キリーク、それが同行者の名前
腕の凄さでオレも名前は知っていたが
「(まさかここまでとはね…)」
彼の殺気は威圧などのレベルをとうに超えていた


「どうした…?獣らしく飛び掛かってこないのか?」
キリークの口調は普通
だが対峙するサベージウルフ達は怯えて近付いても来ない
「なら…死ね」
無情にソウルイーターが舞い、サベージウルフ達は即座に血に変わる


「(怖い…)」
それがオレのキリークさんに対する正直な感想だった
「(殺気の上にあの技量)」
正面から戦ったら勝てる気が全くしない
「(悔しいが…今この時敵で無いことを救いと思うぜ)」
ギリリと歯軋りをさせながらオレもエネミーを斬り倒した


「…」
そんなワイズをキリークは観察していた
「(奴は…)」
声にも表情にも出さず笑いながら


「アッシュ=カナンさんか?」
倒れたハンターに駆け寄り話し掛けるオレ
「き…みは?」
弱々しいがちゃんと返答はできるようだ
「…」
キリークさんはソウルイーターを肩にかけたまま無言で立っている
「大丈夫か?早くパイオニア2に戻らないと、レスタ!」
応急処置の代わりにレスタを唱えるオレ
「データ…ディスクを…奴らに…気をつけてくれ、まだ近くに居る!」
アッシュがそう言った瞬間草村が割れて二匹のエネミーが現れる


「ほう…」
キリークが構える
「他の獣とは違うようだな…」
その声が、笑うように響く

「ワイズ」
「…はい?」
「オレが赤いのを殺る、手出すなよ」
「(赤いのって…グルグス・グーだぜ!?)」
例の如く記憶が不鮮明だが名前は出てくる俺
「(もう一匹は…グルグスか)」
しかも目ッ茶苦茶オレを睨んでやがる
「やる気まんまんかい…」
封印ノダチを構えながらゆっくり立ち上がる


「…ちくしょう」
アッシュが悔しさを小声で言う
「アッシュさん」
それを聞いたワイズが言う
「悔しいと思えるなら、絶対に強くなれるさ!
そう言ってワイズはアッシュに背中を見せ、グルグスに立ち向かう
その背中を、アッシュはしっかりと捉らえていた


「少しは楽しめたが…所詮は獣か」
キリークがグルグス・グーに刺したソウルイーターを引き抜き、肩にかける
「さて…」
データディスクを拾いながら、キリークの興味と視点はワイズに向いていた


ぐう!
間髪、グルグスの噛み付きをカザミノコテで防ぐワイズ
「流石に早ぇ〜」
体制と封印ノダチを構え直す
「(飛び掛かり斬りしたらあっさりカウンター来たし)」
額を汗がつたう
「なら」
ワイズの右目が深緑色から
「これはどうだ!」
金色に変わる
ゾンデ!
ハンターでは考えられない数の蒼い雷がグルグスに降り突き刺ささり
「ギャ…」
グルグスが痛みに鳴き叫ぶ前に
終い!
ワイズが封印ノダチで右斜めに両断した


「立てる?」
オレはアッシュに肩を貸してやる
「すまない」
なんとか立ち上がるアッシュに
「オイ」
キリークさんがデータディスクを投げて渡し、そして
「ワイズ」
「はい?」
「オレは先に報酬を貰いに行く、その足手纏いは任せる」
オレに言いながら後ろを向き、テレパイプを開く
「…もっと強くなれ、オレを楽しませるくらいにな」
最後にそう言ってキリークさんはテレパイプに消えた
「…ハアッ」
オレはキリークさんのテレパイプが消えてから、緊張の糸が切れて溜息がでた
「さて、んじゃオレらも帰りますか」
リューカーを唱えるオレの左横で
決めた!
肩を貸していたアッシュが叫ぶ
俺いつかアンタの背中を守れるくらいに強くなってみせるよ!

「そりゃ助かる…けどさ」
アッシュは妙な汗をかいているのが解る
「まず怪我を完全に治してからにしような、叫ぶのはさ!」
オレは痛みを隠しているのをバレバレに叫んだアッシュに苦笑交じりにそう言い、リューカーに入るのだった