Story6 学校 奢り

体育館

「あぢぃ…」
確かに暑い
「あぢぃーーー」
しかし煩い
「あぢぃよ賢士ーーー」
「俺にふるなよ谷藤」
こっちだって暑いんだからよ
「あまり暑い暑い言うなよ、気が滅入る」
ったくなんで天上ガラス張りなのかねこの学校の体育館は!
しかも
「なんで視聴覚室が破壊されたからってわざわざ全校集会開くかな〜、夏休み近いんだからその集会ん時にまとめて言やいいのに」
そう、なぜに太陽が一番元気な4限目に全校集会
「生徒疑ってるんだろ」
やや犯人俺なんだけどな
ブーマのせいもあるから完全に俺のせいでは無い
とか主張しても無駄だろうし黙っておく
「なんでも机とか消化器とかぐちゃぐちゃだったんだって?」
そりゃ逃げ回ったり消化材かけたりしたからな
「爆発でもしたんじゃね?消化器」
なげやりに答える俺
「…お前何か知って無いか?」
ギクリ
「暑いなぁ」
俺は手をぱたぱたさせる
先せーい!犯人賢士だそうです!!
何言ってんだてめぇ!!
谷藤に俺のみぞ打ちクリーンヒット
「や、やるな…賢士…」
腹を押さえながらうずくまる谷藤
「暑いんだからくだらねぇ事言って煽るな」
「い、いえっさ…」
悪い谷藤
俺はバレても良いんだが俺がバレると転校生もこの場に引きずり出されるからな
転校したてでいきなり全校生徒の前に出されるなんて目付けられかねねぇし
「にしても暑いぞ〜」
べろだして言うなよ
余計暑く感じるわ
「後でアイスでも奢るから黙れ」
数分でも沈黙が欲しい
暑いから今はなんでもウザイ
それとこれ以上時奈先生に目つけられたくねぇ(さっきから睨まれてる)
「マジで!?よし黙る!!」
ああ、黙ってくれ
できれば大分長い時間

その時

「以上で全校集会を終わります…」

なんですとッ!?
谷藤沈黙から1秒も経過していないってぇのに!?
アレですか!?奢り損!?
「よしゃ売店行くぞ賢士」
と俺の後エリを引っ張る谷藤
「嫌だ…」
何かもう歩く気もしないのでそのまま拉致られる俺


日影の自販機前

「ま、みんなも考えること同じだからな」
「でも売店混みすぎだろ、体育館より暑かったぞ」
「だから我々は自販機前に撤退したのだろう?賢士君」
ハハハと笑う谷藤
正直疲れる
何って精神が
「いいから早く選べ…言っとくが二本までだぞ」
「アイスとジュース一本ずつも可?」
「特別な」
「よしゃ!ならこれとこれ!」
「ジュースはいつものか」
さっさと小銭を入れてボタンを押す俺
「ほれよ」
ジュースとアイスを投げて谷藤に渡す
「これで俺のポイントアップだぞ賢士!」
ジュースを掲げながらニカッと笑う谷藤
「野郎のポイントなど興味無し」
右に首を振りながらケッと言う俺
「なら後のお方にでも奢れよ」
ジュースを空けて口に運ぶ谷藤
「後のお方?」
ゆっくりと後を向くとそこには
「転校生」
が俯き加減で立っていた
「邪魔者は去るでよ〜」
とか言いつつ後向きで走る谷藤
「そのままこけろ!」
ついでにジュースとアイスで腹壊せ!
「あの…」
「ぅはいッ!?」
いきなり話かけられてビビった俺
「あ、す、すみません」
ぺこぺこと頭を下げる転校生
う〜ん
…本当に時奈先生の妹なのか?
「いや、いいからどしたの?」
俺も何か飲むかね
転校生って飲み物何好きなんかな
「先日はありがとうございました、いろいろと」
深くお辞儀をする転校生
「あー…まぁ気にしないでな」
俺はジンジャ○ールでいいか
転校生は無難にスポーツドリンクにしとこうか
「でもブーマから守ってくれたじゃないですか」
「あー…あれはまあ…」
自販機からジンジャエー○とスポーツドリンクを取り出しながらはたと思う
「…あれがブーマって知ってるの?」
「あ、はい、PSOってゲームで似た敵がいますから」
フム
「転校生ってさ」
「はい?」
「PSOユーザーなん?」
「一応は…あれ?賢士さんもなんですか?」
「正解、ほら」
言いながらスポーツドリンクを渡す
「あ、ありがとうございます」
両手でとまどいがちに受け取る転校生
「ベンチあるし座って話しよう」
そう言ってベンチに座る俺
「は、はい」
転校生もベンチに座る
「さてと」
ジン○ャエールを空けてあおる俺
「くあーー!キクーーー!!」
炭酸は染みる
「クスッ」
「あ、笑ったな?」
ちとハズイじゃねぇか
「だって気持ち良さそうに飲むから」
クスクスと笑顔で言う転校生
「好きだからねコレ」
そう言ってジ○ジャエールを軽く左右に振ってみせる俺
「ん?」
ふと気付く
「?」
「それ、嫌いだった?」
それとはスポーツドリンクのことだ
転校生は空けてすらいなかった
「そうじゃないんですけど…」
「奢りだから飲んでくれないと困るんだけど?」
と笑ってみせる
「あ、は、はい!」
わたわたとスポーツドリンクを空けてあおる転校生
「…むせ無いようにな」
そう言って俺も自分のをあおる
その時、気持ち良い風がふく
「おー…いい風だ」
「本当に…」
俺がちらっと転校生をみると長い綺麗な赤い髪が風に揺れていたのが見えた
「…何か?」
「え…?」
「じっとこちらを見てましたけど…どうかしましたか?」
「あ、え!?そんな長く見てた!?」
や、やべぇ!
見取れてた!!
「い、いや時奈先生より少し淡い赤だなって」
「何がです?」
「転校生の髪の色」
「あー、そうなんですよね、この色のせいで昔姉さんと喧嘩したりしたんですよ」
と笑う転校生
…昨日と偉い違う印象を受けるな
少しは打ち解けたのかな
「友空さんは立派な黒髪ですよね」
「立派かどうかは解らないけど」
と俺は少し伸びた自分の髪を触る
「染めたりとかはガラじゃなくてね、ゲームの中ならリアルから見て突拍子の無い色にするんだけど」
「例えば?」
興味深々で聞いてくる転校生
「青系」
即答だ
「好きな色なんですか?青」
そう聞いてスポーツドリンクを飲む転校生
「他にも好きな色はあるけど、自分の分身を作るなら髪は確実に青系だね」
言い終わったあとに俺は立ち上がって一気に○ンジャエールを飲み干す
「さてそろそろ昼飯確保に走らないと」
「友空さんはお弁当じゃ無いんですか?」
「この時期って梅干しとか漬物入って無いと弁当危なくてさ、俺どっちも嫌いだから売店物ですましてるんだ」
そう言って空になった缶を缶入れに投げ入れる
「よし入った!っと、転校生も急いで昼たべないと間に合わないぞ」
「あ、はい」
そう言って立ち上がる転校生
「したら教室で!」
そう言って俺は日影から一転、戦場(売店)へと向かうのだった

「…これのお礼言いそびれちゃった」
そう言って飲みかけのスポーツドリンクを見る私
「駄目だな…私」
昨日のお礼も何とか言えたみたいなものだし
「(それにしても…)」
ベンチから立ち上がって
「(このスポーツドリンクってこんなに美味しいんだ)」
そんな風に思いながら私は教室を目指すのでした