Story4 教室 そして校内案内


朝礼の時間、時奈が全員の出席を取った後の事だった
「いきなりだが転校生を紹介する」
クラスで少しのザワメキが起こる
「(来たな…)」
賢士は昨日の時奈とのやり取りを思い出して時奈をバレ無いように睨み付ける
「賢士、賢士」
谷藤が小声を発しながらシャーペンで背中を突いてくる
「何だよ」
機嫌悪そうに聞き返す賢士
「野郎かな?女かな?」
お決まりな事を聞く谷藤
「知るかよ」
賢士が素っ気なく返すと
無駄口厳禁ッ!
時奈のちょうく狙撃が賢士を椅子ごと倒す
「撃墜されたな、南無〜」
倒れた賢士を見て手を合わせる谷藤
「…もう慣れたよ」
こういうやりとりは幾度としている賢士
そのせいか周りの生徒達のリアクションが大きく無い
賢士は正直席を変えて欲しいと思うのだが、時奈が面倒臭がって席替えはこのクラス始まってから一度も無い
「それじゃ転校生入場〜」
時奈が教室の前ドアを開けると転校生入って来て教壇を目差す
おお〜
等とクラス中の男子がざわめく
「(そのうち椅子壊れるんじゃないか?)」
とマイペースで座り直す賢士以外は
「じゃ名前黒板に書いて、自己紹介しな」
いつの間にか教壇、つまりは転校生の隣に立つ時奈
「はい」
返事をして黒板に白チョウクで名前を書く転校生


「(あれが転校生…)」
なッがい髪だな
手入れ大変そうだ
…あれ?


「河峰時乃です、よろしく」
正面を向いて姿勢正しくお辞儀する綺麗な長い黒髪の転校生
それを見て喚起する奴、勝手に自己紹介する奴、口に指くわえて口笛する奴、等々が発生する
たいてい野郎


「(女子ですか…)」
って待てやジナさん!
んな話ひとっことも聞いて無いぞ俺ぁ!?
あれ…河峰って?


「時乃は私の大事な妹だ、野郎ども、手ぇ出すなよ?」
眼力のレベルでクラス中の男子を睨みつける時奈
何ーーーぃぃぃ!?
クラス中が驚いた


「(アンタの妹かよッ!!)」
クラス中の声よりでかい声で心の中で叫ぶ俺
さらば我が平穏な学園生活…
全然平穏じゃ無かった気がしないでも無いが


「で時乃の席だが…」
席は空いて要るのだが考え込む時奈
「どうせだから席替えしようか」
ニヤーっと、悪魔な笑いをする時奈
それに対して大勢の生徒が賛成するが
「(悪寒がッ…!頭痛がッ…!)」
賢士だけがかなり気のりしなかった


席替え中(時奈の独断で)


で、だ
「せんせ〜い」
「なんだね谷藤」
俺は席後ろに一個ずれただけなんだが
「なんで時乃ちゃんの隣に賢士なんですか?」
そう何故に俺の隣!?
面倒見るってたしかに言ったけどそれでですか!?
「ここは公平にくじとかで決め…」
そうだ!もっと言ってやってくれ谷藤!!
「文句あるなら吹き矢が飛ぶよ?私の」
「せんせ〜い、文句無いで〜す」
谷藤〜〜〜!もちょい根性みせろやあああ!!
「じゃこのまま授業に入るから、賢士は教科書見せてやるように」
あーはいはいもう覚悟決めますよ
「いっしょっと」
俺の机を動かして転校生の机と繋げて教科書を開く
「…見ずらいだろうけど我慢してくれよ」
別に教科書に落書きがある訳じゃないぞ
ただ下線とか赤線が多いだけだ
「…使いこんでる」
んな以外そうな言い方せんでも…
「落書きだらけだとでも思った?」
皮肉って見る
「…」
反応無しはかなりキビシィんですけど?個人的に
「せんせ〜!賢士が時乃ちゃんを口説いてま〜す!」
「(ジナさんを煽る発言すんなや!)」
ふざけた発言をした野郎を睨み付ける俺
その瞬間、赤ちょーくが俺の眉間に直撃する
「私の授業を壊すな」
「へい…」
俺の頭は壊れてもいいんですか?
「クスッ」
お?
転校生笑ってら
…俺はかなり痛いんだけどもね
「(…あれ?)」
最近似たような笑顔を見たような気が
「(うむう?)」
…思い出せ無いので授業に集中しますか



放課後の教室

「さてと、転校生」
背負い鞄を持ってから席を立ち、時乃に話し掛ける賢士
「何?」
ノート等を鞄にしまいながら聞き返す時乃
「校内案内するように先生に言われてるんだが、時間ある?」
「…頼みます」
そう言って席を立つ時乃
「5階から教えるから、階段いくよ」
賢士がそう言うと頷いて後ろをついてくる時乃


「(う、う〜ん)」
困った
「5階の一番右端、ここが第一音楽室で複数のクラスで授業やる時に使うんだ」
「そうですか」
「5階の特別教室はここだけだから4階に降りようか」
「はい」
先導して階段を下りる俺の後を付いてくる転校生
「(会話が…無い)」
静かな子が苦手な訳じゃないんだけど…なんつうか
「あの」
「ふぁい!?」
いきなり話し掛けてられて声裏返ってますがな俺
「教科書…見せてくれて……ありがとう」
「あ、うん」
なんだ、ちゃんとお礼言える良い子じゃ無いか
「校内案内もしてもらって…」
「まぁ時奈先生に言われた事だし、気にすんな気にすんな!」
実際めんどがってたしな俺
「でも…ありがとうございます」
マジで良い子や…!
「いいっていいって!それより早く校内案内するよ、夏前だから日長いけど夜は物騒だし」
「はい」
気のせいか校内に人の気配が少ないし、さっさと終わらしてしまおう
「ってはうあ!」
「!?」
「あ、いやごめん、5階って特別教室第一音楽室しか無いんだから口で説明すればよかったかな、と」
ちと大袈裟なリアクションしてしまったが、カットできるとこはカットするに越したことは無い
「でも歩いた方が覚えれますから…」
穏やかに笑って自分の考えを言う転校生
「そっか、ならいいか」
「はい」
などと話していたら4階到着
「この階にはそこの第二音楽室と視聴覚室があるんだ」
第二音楽室は降りて来た階段のすぐ横、つまり階は違うけど第一音楽室と同じ位置にある
「じゃあ視聴覚室は何処に?」
さっきとは転校生の声が明らかに違う
少しは俺に慣れたのかな?
「この廊下の正反対側だよ、見に行く?」
「はい」
転校生の返事を聞いて先導しようとしたその時、PSOで洞窟のエネミーが出現する音が聞こえる
な!?
え?
転校生と俺は同時にその音のした方向を見る
フゴォ!
そこにはこちらの世界に居るはずの無いエネミー、ブーマが立っていた