Story2 森エリア1 出会い


バ、バートル!?
悲鳴を聞き付けて俺が辿り付いた先にはバートルに追われるフォマールの姿
「助けに…!」
行きたいのに体が言う事を聞かない
頭の中で

あいつはヤバイ
今の俺では勝てない
狙われる前に逃げろ

等と警告サイレンが聞こえる
呼吸も瞳孔も乱れてきてる
理由は今は解らない
「(だからって!)」
そう頭の中で言うとやっと体が動く
封印ノダチを地面に突き刺してデーモンバルカンの片方をアイテムボックスから取り出して右手に携える

死ぬぞ?

この場最後の警告サイレンが頭を流れる
知るかッ!
警告サイレンを黙らせるように声を張り、封印ノダチを左手で抜いて俺は走る
「(見捨てれるかッつうの!!)」


私は訳が解らなかった
ただ家に帰って来て何時もより早目に、PSOをオンラインで始めただけだったのに
何で私はこの姿をしているの?
何で私はここに居るの?
何でエネミーに襲われなきゃならないの?
「(助けて…!)」
周りには誰もいない
そして振り上げられるエネミーの右腕
いやあああああ!!
私が叫んだその時、右腕を振り上げたエネミーの顔付近に無数のフォトン弾が着弾しました


こっちだ!バードル!!
ろくに狙いの定まらない右手のデーモンバルカンを乱射しながら、バートルの気が俺の方に向くように叫ぶ
俺が
乱射を止めずに走り一気に間合いを詰めて
相手だッ!
デーモンバルカンの狙いを外して、走ってきた勢いと左腕有りったけの力でバートル目掛けて封印ノダチを振り下ろすッ!


彼の斬撃はエネミーの左腕を切り落として地面に刺さり、エネミーは少し後退しました
でも私がそれに気付く前に言葉をかけてくれました
「大丈夫か?」
と、一瞬ですがこちらに顔を向けて
状況も何もわからなくなっていた私には、その言葉がとても救いになりました


「は、はい」
良し無事だな
あとは
「(コイツを何とかしないと!)」


ワイズは直ぐさまデーモンバルカンをバートルに向け直してトリガーを引き絞ろうとしたが、バートルが一方踏み込んでデーモンバルカンをワイズの右手から払い落とす
「んなろッ!」
ワイズはフリーになった右手でも封印ノダチの柄を掴み、両手力任せで振りかぶるように地面から引き抜き、その動作で封印ノダチをバートルに当てるとバートルは状態を崩す
これで!
それを見逃さずワイズは素早く右腕でガードするバートルを、その右腕もろとも叩き割った


「なんとかなったな」
彼はまた地面に刺さった武器を抜きながら、落ち着いた声でそう言って私の前まで歩いてきます
「立てる?」
と言って左手を差し出してくれました
「あ、ありがとうございます」
そう私は答えて手を借りますが、全然体に力が入らなくて殆ど彼の力を借りて立ちあがりました
「すみません、私地表に降りたの今日が始めてで…」
正確にはこんな体験自体が始めてでしたが、この時はこう答えるので精一杯でした
「そうなんだ、実は俺も今日が始めて」
彼はそう言って笑います
「…」
始めてであの動きができるものなのでしょうか?
私なんてただ怯えてただけなのに
正直恥ずかしかったです
「それより怪我、無くてよかったね」
彼は私が自己嫌悪に陥っているのを知ってか知ららずか優しい言葉をかけてくれます
「優しいんで…す…ね…」
そう私が言おうとしたら彼は先程払い落とされた武器を回収する為に少し離れた場所に既に移動した後でした
「壊れちゃいないっぽいけど一応後で武器屋に見てもらうかな…」
と彼はかがんで武器を見ています
なんでしょう…何か面白くありません
なので私はちゃんと聞いてもらえるように近付いて言おうと思いました
「ところで俺」
「!」
近付こうとした時急に彼に声かけられて止まってしまいました
「どしたの?」
「な、なんでもありません!」
私にとってひじょーに恥ずかしい状況でした
「それよりどうかいたしましたか?」
私、声が裏返ってます
「うん、俺ワイズって言うんだけど君はなんて?できれば名前教えて欲しいんだけど」
名前…私の名前?
「ジノ…ジノです」
私は正確には私じゃない私の名前を答えました


「ジノさんか…よろしくね」
ワイズは封印ノダチを地面刺して右手を差し出す
「こちらこそ、よろしくお願いしますワイズさん」
ジノも右手を出して握手する
「ところでワイズさんは何故地表に?」


「え!?」
…しまった
地表に下りるからには何かしら理由が無いと怪しいか!?
そりゃ総督府から依頼は受けてるけど、基本的にクライアントからの依頼は口外しちゃまずいだろうし
「…どうかしましたか?」
ジノさんが気にしてる
「い、いや(こんことになるならなんかダミーに依頼受けておけばよかったかあああ!?)」
と俺が脳内でムンクの叫びをしていると
「…聞いちゃいけないことでしたか?」
と不安そうにジノさん
「いや、そうじゃないんだけど…」
とりあえず俺は総督府の依頼は伏せて正直に答える事にした
「ちょっと気になる事があってね、それを独自に調査しようと思って地表に降りたって訳」
よ、よし
遠周りだけど嘘はついて無いぞ
「そうなんですか」
なんとか納得してもらえたようだ
「ジノさんは?」
「私…ですか?」
「差し支えなければ教えてくださいな」
そんな風に言いながら俺は手早くデーモンバルカンをアイテムボックスに仕舞う
「私も…似たようなものです」
ジノさんが穏やかな顔でそう言った
そして
「あの…」
また不安そうにして聞いてくるジノさん
「ん?」
なんだろう?
…まさか今のオレって怖い表情してる!?
エネミーの血が顔面に付いてるとか!?
「ギルドカード、交換してもらえませんか?…良ければですけど」
小さ目の声で俯いてそう言う
よかった
表情が怖かった訳じゃ無いらしい
ちなみに血も付いてないようだ
「オレので良ければどうぞ」
俺が知らなくてもオレが解るから滞り無くギルドカード交換が完了する
「良しッ!と」
その時
「…ッ」
「(え!?)」
ジノさんが突然ぽろぽろと涙を流した
「ど、どうしたの!?」
オレも突然の事でわたわたと動揺する
こんな時どうすればいいか俺も知らなかったからだ
…プレイボーイとか言われる人種ならこんな時なんか気の効いた事でも言うのかな
「すみません…凄く…嬉しくて」
と涙を流しながら笑顔で言うジノさん
「!」
その顔をもろに直視してしまった俺
「(カッ…カワイイ…)」
殺人的なまでにそう思ってしまった
「(ハッ!?いかんいかん!!)」
なんかトランスした自分を首を横に振って素の自分に戻し
「改めてよろしくね!ジノさん」
改めて右手を出してそう言う俺
「はい!こちらこそよろしくお願いします」
ジノさんは左手で涙を拭いながら、右手でしっかりと俺の右手を握り締めてくれた
そして突然、目の前が白く光っていった



自室
兄さん!
はうあッ!?
妹の声で気付けばいつの間にか俺の世界の自室
「あり??」
訳が解らない
ワイズが俺で俺がワイズでエネミー倒してジノさんに会って…
「TV画面、今日はメンテナンスだって」
後ろから聞こえる妹の声が混乱を晴らして行く
「そ、そか、つかお帰り」
「ただいま、パソコンやるからケーブル抜くよ」
そう言って俺の部屋から出ていく妹
「あいよ〜、つうか勝手に俺の…部屋…入ん…な…」
入んなよ
と自分の言葉を言う前に俺は倒れて寝てしまった