Story10 鋼の心


賢士の部屋

「さぁて!誰か居るかな〜?」
風呂上がりでラフな寝間着姿でGCの電源を入れる賢士
使用キャラをワイズに選択してオンに入るとさっそくギルドカードで仲間…ないし友達の検索をする
「お!ヒットヒット!」
その名前を嬉々と確認する
「ゼロとナイトと…」
そこで思い出す
「そういえば時乃はこないだ二枚目のメモカだったな…一枚目と間違えたとか言ってたし」
なら、と天上を見上げて考える
「(1stはなんてキャラなんつうんだろう…)」
とか賢士が考えているとTV画面がまた強烈な光りを放つ
「い!?またかよ」
呆れたような、嬉しそうな声を出して賢士はラグオルへ跳ぶ



森1

「ふうぃッ」
賢士と同調して息を吐き出すワイズ
「依頼を承けて降りたんだよな」
封印ノダチを右肩に背負って森を歩き出す
「たしか商品のマグを回収するとか…ってやっぱなんか嫌なクエストだな」
ワイズはこのクエストを承けてガロンと先に依頼を承けたレンジャーの話を聞いた時に覚えた嫌悪感を思い出した
「そりゃあマグは防具だろうけどさ…意志だってあるのに…なんかムカつくな」
やり切れないと言うか煮え切らない感情を剥き出しで歩く
そんな感情に委ねているワイズからは何か黒いもの…いわゆるプレッシャーと呼ばれるものまで出ている
「あ!ワイズさん!!」
そんな時、正面のゲートからカジューシースを持ったジノとライフルを持ったレイキャシールが現れる
「ジノさんじゃないか」
ジノに出会いなんとか感情を平静にしようとするワイズ
「ちょうど良かった、少し手伝って貰えませんか?」
少し焦ったように何か頼み事をしようとするジノ
「何?どうしたのさ」
その様子に何事かと話を聞くワイズ
…ぶっちゃけクエストを放棄する気満々だ
「実はこのエレノアさんのマグを一緒に探して欲しいんです」
そう言うとジノは自分と一緒にいるレイキャシールに視線をやる
「初めましてワイズさん、私エルノア=カミュエルと申しますぅ」
そう言いながらお辞儀をするレイキャシール
「丁寧にどうもエルノアさん、でマグを行方不明にでもしたのかい?」
微妙な言い回しだがワイズにはこんな言い方しか出来なかった
マグを無くしたのかとは聞きたくなかったからだ
何故ならワイズは意志のあるモノを物として扱いたくないと思っているからだった
「はい、正確には私のマグでは無いんですけどぉ…」
少し俯きながら言うエレノアにワイズは思いだした
「まさか…マグの強奪者ってエレノアさん?」
それは放棄しようかとも思ったクエストの事だった
「え!?」
「ち、ちがいますぅ!」
そのワイズの言葉に驚くジノと焦りながら否定するエレノア
「強奪だなんてそんなぁ!私はただマグの皆が悲しそうにしてたから話し掛けただけですぅ!」
「マグに」
「話し掛けた?」
エレノアの発言に目を丸めるワイズとジノ
「そのぅ…信じてもらえないかもしれませんが私はマグと話せるんですぅ」
何故か申し訳なさそうに言うエレノア
「話をしていたらマグのみんながマスターの所へ帰ると言い出してどこかえ行ったしまったんですが一人だけ私に着いてきてたんですぅ」
「ならその着いてきてたマグがいなくなったと?」
エレノアの説明を聞いていたワイズが聞き返す
「はい、急にいなくなったので私心配で心配でぇ…」
人やニューマンなら泣きそうな声のエレノア
「成る程、ならとにかくそのマグを探した方が良いみたいだな」
と優しい声で言うワイズ
「そうですね、探しましょうエルノアさん!」
ジノがワイズに賛同する
「信じてくれるんですかぁ!?」
喜びの声を上げるエレノア
「あ、でもワイズさんさっきエレノアさんの事を強奪者って…」
あれはどういうことなんですか?と言う顔で言うジノ
「俺が承けたクエストが強奪された商品の回収って話なんだけど、どうやらその商品ってのがマグのことらしい」
「え!?」
「じゃあマグを探してくれるのは…」
ジノとエレノアの表情が陰る
「クエストだから…とか言うキャラじゃ無いしねー俺」
破顔して二人笑いかけるワイズ
「とにかく探そう!一人でいたらマグも心細いだろうしさ」
「「はい!」」



「所でぇ」
森の中を大分歩いた後エレノアが話だした
「ワイズさんのマグって大きいですねぇ」
そう言いながらエルノアがワイズのマグ…ヴァラーハに触れる
「良い子みたいだし、ワイズさんが優しい証拠ですねぇ」
凄く嬉しそうに言うエレノア
「…優しいのか?俺」
小声で左頬を引っ掻くワイズ
「取り敢えずまぁ…俺のマグがちゃんと育ってるなら嬉しいな」
ヴァラーハをポンポンっと軽く叩いてやる
「私もマグの声が解ればいいのにな…」
とジノも自分のマグ…ナムチを優しく触ってやる
「ジノさんのマグは穏やかな子みたいですよぉ」
ヴァラーハからナムチに視線を写して言うエレノア
「きっとジノさんに似たんでしょうねぇ」
なおも嬉しそうなエレノア
彼女は余程マグの事が大好きなようだ
「あ…!」
ピタリとエレノアの足がとまる
「どうしました?」
それを見てジノが声をかける
「あの子の声がしますぅ!」
そう言って走り出すエレノア
しかしその声は見つけた喜びでは無く、悲鳴を聞いたかのように急いでいた
「追うよ!」
「はい!」
一足遅れて駆け出すワイズとジノ



「エレノアさん!」
「ジノさん!ワイズさん!」
ワイズとジノがエレノアを見つけた時には彼女はブーマやゴブーマに囲まれていて、持っていたはずのライフルは地面に転がっていた
「今助ける!ジノさんはテクニックを!」
「はいッ!」
言うや否やワイズは封印ノダチを構えて走り、ジノはカジューシースを敵に向ける
「バータ!!」
ジノが唱えたバータが一直線に数匹のエネミーを沈めてワイズに道を空ける
「ナイスジノさん!退けエネミー!!」
ワイズの振るう封印ノダチが、エレノアを囲むエネミー達を乱雑にけれど素早く斬り捨てていく
「ラスト!!」
ワイズは最後の一匹を縦に斬り捨てると封印ノダチを地面に刺して
「ふう…」
息を吐き出そうとした
その時
「まだ反応が!ワイズさん後ろですぅ!!」
マグを抱えたエレノアが叫んだ時にはワイズの後ろに地面を割ってバーブルが現れていた
「ヤベッ」
反応できたが封印ノダチを地面から抜くにはいたらなかったワイズは、バーブルの振り下ろされた右手をカザミノコテで防ぐのが精一杯だった
「(一撃が重い!!)」
武器を構えたくとも右手はカザミノコテを支える為に使ってしまっている
更にバーブルは左手を上げて追い撃ちをかけようとしていた
「マジィかッ…」
流石に両手は防げ無いとワイズが言葉を漏らした時、精密射撃のフォトン弾がバーブルの頭と両手に当たり、状態をくずす
今ですワイズさん!!
狙撃体制のままエレノアが叫ぶ
「さんきゅエレノアさん!」
バーブルの左手をカザミノコテで払い退けて右目を金色にして右手に青の雷を帯電させる
零距離喰らえ!
殴ると同時にギゾンデをバーブルの体に走らせその身を血へとかえた



「うんうん」
エレノアはマグと何か話している横でワイズはジノにレスタをかけてもらっていた
「悪いねジノさん」
あぐらをかいていたワイズが立ち上がり、左腕を回す
「大丈夫みたいですね、良かった」
ホッと胸を撫で下ろすジノ
そしてさっきのワイズの動きを言う
「それにしても凄いですね!攻撃にテクニックを組合せるなんて」
「名付けてテクニックバインド!なんてね」
笑って言うワイズ
「ワイズさん」
エレノアがワイズに横から声をかける
「ん?どうしたのエレノアさん」
少し落ち気味な声にワイズとジノが心配そうな顔になる
「この子前のマスターにお別れをしてきたそうですぅ」
「ってことは?」
「新しいマスターの所に行くから連れて行ってほしいそうですぅ」
そう言ってワイズにマグを差し出すエレノア
「お願いしますワイズさん」
「解った、責任もってクライアントに届けるよ」
しっかりとマグを受け取るワイズ
「でも心配ですね」
ジノが言う
「この子ちゃんとしたマスターに出会えるんでしょうか…」
「そうですね…」
ジノの不安な感情に伝染したかのようにエレノアも不安になる
「んー」
それを見て思わず考えこむワイズ
そしてひらめく
「良い手がある…かもしれない」
「「?」」
ワイズの微妙な自信に疑問譜なジノとエレノアだった



「マスターの所へ帰ったってなぁ…」
クライアントのガロンが沈む
「マグですからね」
ニコニコと言うワイズ
「ハァ…依頼料はカウンターから受け取ってくれ…払い戻しも出来ないし」
そのガロンの発言にワイズの目が光る
「ガロンさん、その依頼料のことで少しお話があるのですが」



「お待たせさ〜ん」
シティの片隅で待つジノとエレノアに大きめの声をかけるワイズ
「どうでしたかぁ?」
今か今かと待っていたエレノアが近付いて来る
「バッチリ!ほら」
そう言ってさっきのマグをエレノアに渡す
「わあ!」
マグを受け取ると早速マグに話し掛けるエレノア
「一体どうしたんですか?」
とジノがワイズに聞いて来る
「どうも何もただ買い取っただけだよ、依頼料全額払ってクライアントからね」
少し罰の悪そうな、でも嬉しそうな顔をするワイズ
「え!よかったんですか?」
普通に驚くジノ
「ぜーん然」
実際あまり宜しくは無い
実はワイズ君、金欠間近で承けたクエストだったのだ
だがそれよりも
「(女の子二人哀しそうな顔されちゃなぁ)」
と言う意識が強かった
「…やっぱりワイズさん優しいですよ」
ジノがそう言って微笑む
「甘いだけかと存じますがね、自身では」
優しいと言われて普通に照れるワイズは、ふて腐れた顔を装うのだった